日本建築学会論文報告集
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風向直角方向に振動する角柱の空力不安定性について
石崎 溌雄谷池 義人
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1981 年 306 巻 p. 11-20

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抄録
建築構造物のうちで代表的な断面形状をなす正方形を例にとり, この正方形断面角柱が風向直角方向に振動するときに作用する空気力(非定常空気力)の測定を強制振動法により行なった。その結果, 模型に作用する非定常空気力の特性を無次元風速の値で4から30の範囲で明らかにすることができた。以下にまとめを記す。1)スペクトル解析により, 非定常空気力の主要成分は模型の振動数成分と渦の発生周波数成分の2つから成ることが分った。両方の周波数が一致する同期領域は共振風速付近でみられ, 振幅の増加にともない拡がる傾向にある。2)非定常空気力をフーリエ展開して得られる振動速度と同相の空気力係数C_Iは, 無次元振幅と無次元風速に関して非線形となる。共振風速付近でC_Iは負から正へと急激な変化をし, 正の極値をとる。したがって, この風速付近で生じる渦励振は自励振動的な傾向が強く, 渦励振がピーク応答を示すのはC_Iのピークと密接な関係がある。3)非定常空気力の二乗平均値から求まる空気力係数C_<rms>は, 無次元風速の増加につれ一定値に近づく。この値は静止模型に作用する変動空気力から求めた値とほぼ等しい。4)ギャロッピングの解析に用いられる線形の準定常理論は, 2次元模型では無次元風速が12前後で適用できるのに対し, 3次元模型では30前後にならないと適用できなくなる。5)非定常空気力と変位との位相差は, 共振風速付近で負から正へと変化し, この変化がC_Iの値を負から正へ移行さす。高風速域での位相差は, 100度から120度となり90度にならない。2次元模型の場合は研究者により多少のばらつきがあり, 40度から90度前後の値をとる。6)構造物の風による振動応答が質量減衰パラメータの値によりどのように変化するかをある程度予想できた。この値が小さいと, 渦励振からの発振がそのままギャロッピングに移行する。逆に大きすぎると, 渦励振のみあらわれてギャロッピングは生じない。その中間の値で渦励振とギャロッピングとが分離する。7)質量減衰パラメータの値が600のとき, 無次元風速で14から18の範囲で, 振動応答の不安定なリミットサイクルの存在がポアンカレの定理によって示された。この現象は2次元模型の場合にも見られるが, 無次元風速が本実験結果に比べ低くなる。8)振幅の増大あるいは減少にともなう遷移時間を数学的に検討した。以上述べてきた実験結果は, あるかぎられた実験条件での結果(風速分布が一様で, 乱れが自然風に比べて極めて小さい)であるために, 自然風中の実際の建物の動的挙動をとらえるためには, さらに実験条件を変化させて研究を行う必要がある。これについては今後の課題としたい。
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© 1981 一般社団法人日本建築学会
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