日本建築学会論文報告集
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開口の筋違補強の研究 : その 2 圧縮力を受ける場合
難波 治之佐藤 勝利
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1983 年 324 巻 p. 9-17

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抄録

せん断力に対する補強として正方形開口部に筋違を設けた板が開口の辺に平行な方向から一方向圧縮力を受ける場合について, 開口部の応力に対する筋違の影響を二次元弾性論により解析した結果, 以下のことが判った。1)対角線筋違およびX形筋違の場合, 開口周上の周方向応力を筋違の無い場合と比べてみると, 荷重と平行な方向の辺上の圧縮応力部分で応力が減少するが, 荷重と直交方向の引張応力部分では逆に応力が増大している。また, 開口隅部の応力は対角線筋違の場合の筋違のとりついていない隅部で応力が減少する。2)平行筋違および菱形筋違の場合, 筋違によって三角形の開口が形成されている隅部で開口周上の周方向応力が減少する。平行筋違の場合には, それに該当しない開口隅部の応力がわずかに増加する。3)筋違には軸力のみならず, せん断力も作用する。筋違の軸力が板の応力分布に及ぼす影響は, 圧縮荷重が筋違材軸に対して45°傾いた方向から作用するために, 板が純せん断を受ける場合に比べると顕著でない。筋違の負担するせん断力の大きさは筋違の軸力よりも更に小さく, 従って筋違のせん断力が板の応力に及ぼす影響は極めて小さい。結局, 板が一方向圧縮力を受ける場合, 平行筋違の時に隅部の一部でわずかに応力が増すほかは, 板がせん断力を受ける場合ほど有効ではないにしても, 開口隅部の応力集中を緩和する効果を示す。

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© 1983 一般社団法人日本建築学会
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