抄録
足貸脚部の商店群は、その業種からみても、その客層その他からみても、全体的には広商域商店街的性格をもつており、とくにその中でも歓楽盛り場的性格の強い飲食店業種が目立つ多い。防火建築帯および上部アパートから規制されることの多い足貸脚部は、一般商店街を構成する店舗よりも深い奥行・広い面積をもつており、それはますます上記の性格を強め、それ以外の狭商域商店街的・生活盛り場的店舗を入りにくくしている。これは、主要道路にのみ面した防火建築帯上に建設される商店群としては、むしろ当然のことであるかもしれないが一方上部アパートとの連りはますます稀薄になつてくるものと思われる。足貸脚部の商店群は、その建設されている地域-繁華な・中間的な・孤立した地域-によつて、かなり顕著な地域性と路線性を示し、これは都心における様々な地域構造的特性を表現していると同時に、都市発展の時間的諸断面をも暗示している。それは、例えば脚部2階の使われ方などに特徴的に現われているが、繁華な地域では飲食店のように1階と併用して店舗で使用されることが多く、中間的な地域ではむしろ2階のみ独立して事務所などに使用され、孤立的な地域ではそもそも2階までの使用がほとんどなくなつているといつた実状である。これらは、ある地域での足貸脚部の使われ方の指針ともなると同時に、将来における転用の不可避性の資料としても、重要な意味をもつものと思われる。足貸脚部の商店群は、現在はともかく将来に大いなる望みをかけているように思われるが、その経営の内部には様々な問題があり、足貸による商店群の誘致・商店街の形成は、後背住宅地の立体的開発などより大きな総合的・統一的な計画にもとずいてなされない限り、因難は多いように思われる。