建築學會論文集
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鐵筋コンクリート造建物の丸鋼節約と經濟的配筋とに關する考察 : 主として多層事務所建築について
藤田 金一郎
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1938 年 9 巻 p. 149-158

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抄録

昨年來、鋼材の價格は極度に騰貴し、目下は、又、平和的事業に使用する鐵鋼は勿論の事、緊急の工事に於ても、之に使用する鐵鋼は極端なる節約に迫られてゐる時機である。重要物資節約の立場からも、鋼の騰貴價格に對應する工費經濟化の必要からも、此際、從來の慣習的な設計方針を再檢討する必要がある。本論文に於て取扱つた所のものは主として鐵筋コンクリート造建物について、(i)構造用鋼材の各種の節約案の提示(ii)其れによつて節約し得る鋼材の概略數量(iii)構造費用への影響(iv)騰貴せる鋼價格に對應する床版、梁、柱斷面の經濟化に關する設計の試料である。 要するに、騰貴せる鋼價格に對處し、又は鋼の節約を主眼とした設計方針に關する研究である。 本文に於て提示する節約案は別に目新らしいものではなく、案の過半は鋼材節約の今日、既に實行されてゐる事でもあるが、節約案の各項がそれぞれ、どれだけの鋼を節約し得るか、如何なる點が鋼節約に大なる効果があるか、如何なる鐵筋比が鐵の色々な單價に對して最も經濟的であるか等の問題を總括的に及び組織的に觀察する事が主目的である。 これによって、一般に從前の設計の鐵筋コンクリト構造用鋼の30%位を節約する事の容易なる事を示し、又必要に應じ更にそれ以上の節約も相當可能である事を示した。 獨り鐵筋コンクリート造のみならず鐵骨鐵筋コンクリート造に於ても次に述べる如き節約方針を實施するならば、近來建築會に於て毎年消費した構造用鋼の60%にて濟ます事が出來る。

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© 1938 一般社団法人日本建築学会
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