2021 年 30 巻 2 号 p. 96-108
光合成速度を高精度で予測可能なモデルを構築することは作物の収量や生産性を予測する上で重要である.また,実用性の観点からは,より簡単に光合成速度を予測することができる技術の開発が望まれる.本研究では野外水田圃場におけるイネ個葉を対象としたガス交換測定により得られたデータを説明変数とし,Long-Short Term Memory Neural Network(LSTM)を応用して,イネ個葉の光合成速度の予測が可能なモデルを構築し,予測精度を定量的に評価した.その結果,1)本研究で使用した全説明変数を用いて構築したLSTMによるモデルは,MAE(平均絶対誤差)指標では20分先までの予測において他のモデルと比較して有意に高い精度を有すること,2)予測時間の前20分間の外部気象や葉内環境の前歴が予測にとって重要な要素であること,3)大気および葉内CO2濃度,水蒸気の気孔・葉面境界層コンダクタンスの時間的変動情報がLSTMによる予測精度に大きく影響すること,4)CO2濃度,光環境,気温のみを説明変数として光合成速度を予測する際,LSTMは回帰モデルと比較して明瞭な優位性は認められないこと,が明らかになった.これらの知見は,作物の収量予測モデルや営農意思決定の自動化技術において有用である可能性が示された.