抄録
現在, 地球温暖化(Global Warming)による異常気象が世界各地で引き起こされているが, その原因の1つとして気候シフトに伴う亜熱帯高圧帯の拡大が考えられる(Seager他、2001)。それに伴い, 乾燥地域の移動および拡大が世界各地で予想される。これは, 世界における食糧生産地域の移動および縮小につながり, 食糧危機へとつながる重要な問題である。研究対象地域である黄土高原(東経100∼115°, 北緯34∼40°)は, 乾燥地域と半乾燥地域の境界領域に位置し4∼10月に降水のある夏雨地域であるが, その大半は7∼9月にもたらされる。黄土高原での小麦は最高気温の出現する7月末に収穫され, 作物の生育期にあたる3∼6月の降雨量が少ないので, 前年の夏(8∼9月)に降った雨を土壌中に浸透·保持させて翌年の発芽·生育をはかっている(田村他, 1990)。それゆえ, 黄土高原における夏の降水は, 食糧生産において重要な気象現象である。大和田(2001)は, 黄土高原における夏季の降水の要因を平均場から考察し, インドモンスーンによる下層の南西風と, 上層からの北太平洋高気圧の縁辺部から吹き降りる南西風, さらに黄土高原北側に形成される低気圧から噴き出す下層からの北西風による三次元的な収束帯が大陸の乾燥大気との間に局地的な不連続線を形成し, その上空には偏西風が蛇行して極の寒気が南下しやすく, 積乱雲が発生しやすい条件が揃っていると結論付けた。また, 大和田(2002)は, 1979年から1992年までの14年間に注目し, 黄土高原における夏季の降水の経年変動を調べた。その結果, 降水が多い年と少ない年の比較考察から, インドモンスーンから吹き出す南からの風と上空のジェット気流の南下が, 黄土高原の夏季の降水において特に重要な役割を持つことが明らかとなった。しかしながら, これまでの考察は月平均場での議論であり, 降水の日別変化をもたらす気流系については言及していない。そこで, 本研究では, 1979年から1992年までの黄土高原における夏季の降水の経年変動の結果から黄土高原内で夏季において一様に降水量が多い1979年を事例的に抽出し, 日別変化の議論から降水がもたらされる大気場を明らかにすることを目的とする。