抄録
ネパール、カトマンズ東方の中間山地に居住するタマンやバルバテ、ネワールといった民族集団は、マラリア危険地帯をサラノキ(Shorea robusta)の分布域として認識し、この高度限界(1,200m)以上の斜面に集落を立地させ、谷底のマラリア危険地帯に開発した水田には、暑熱期は昼間だけ近づいて農作業をおこない、夜は高所の集落にかえるというかたちでマラリア感染を避けてきた(文化的適応)。これに対して、谷間のマラリア危険地帯に立地する集落に居住してきた少数民族集団、ダヌワールは、生物学的にマラリアに適応してきたと予想し、検査をおこなった結果、低頻度のヘモグロビンE症、グルコース6燐酸脱水素酵素(G6PD)欠損症のほか、高頻度でα+サラセミアが検出された。他方、文化的適応をおこなってきたタマン·パルバテ·ネワールについてはα+サラセミアは低頻度であった。