抄録
本発表では, ネパールの首都カトマンズの都市部へのミルクと肉の供給状況を遡及的に探る観点からこの国の畜産業の近代化の容態を確認し, 家畜交易やミルク·肉の販売に伝統的に担ってきたカサイやムスリムの人々の活動の重要性や,ヒマラヤ山地部の畜産業の発展可能性についてその生態条件をもとに考察する. 南アジア世界では, 家畜や畜産物は生産資源や食料源という経済的意義のみならず文化的·社会的にも重要な意味合いをもつ. そのため, 南アジアの家畜や畜産業の研究は, 宗教倫理やカースト·システムに関わる家畜観や食慣習の研究, さらには生態学的な基礎研究とあわせて統合的に研究を進めることに意義があり, そうした地域研究的な地理学研究が必要であることも示す.