日本地理学会発表要旨集
2002年度日本地理学会秋季学術大会
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東京都特別区における水辺環境整備事業の現状と課題
坪井 塑太郎
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p. 161

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抄録

本研究では, 東京都特別区を事例として水辺環境整備が行われている施設の基礎資料を収集整理し, 現状の把握を行うとともに整備の課題を検討した. 都市における良好で機能的な水辺環境の創造のためには表象的な河川の諸事象や心象の向上だけでなく, 水辺を構成する地域の特性を考慮した整備が重要であると考えられる. 本研究では, 以上の問題視点にたち, 水辺環境施設を周辺地域の土地利用の特徴や流水形態から「都心オフィス街型」「沿岸運河型」「郊外宅地型」の3類型に分類し各々の特徴を検討した. その結果, 「都心オフィス街型」では洪水調整池機能が, 「沿岸運河型」では災害時の人や物資の運搬を想定したリバーステーションなどの防災機能が, 「郊外宅地型」にはビオトープの設置による生態環境確保が行われていることが明らかになった. しかし, 水辺環境施設の中には, 水利権の規定が不明確なものもあり, 今後はこれらの調整や法整備が必要であることが指摘された. 都市における水辺の存在価値は, 良好な環境創造だけでなく, 現在では生態, 景観, 防災などより多面的な機能が求められている. 今後は, 地域の特性を考慮し, 水辺の構成要素間の重要度を検討することにより, 詳細かつ構造的な議論の可能性を指摘した.

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© 2002 公益社団法人 日本地理学会
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