抄録
1990年代後から、公共事業の見直しが始まった。全体的に少数だとは言え、当該地域にとっては一大事業の中止を意味し、ポスト公共事業を視野に入れた地域像の構築が求められている。但し、こうした趨勢はいわば「上から」のものであって、推進、反対を問わず、それまでの住民運動がそのまま将来の地域づくりにつながるとは限らない。本発表では、公共事業が止まった中部ダム(鳥取県)、温泉津町(島根県)を事例として、理論および実践の両側面から、地理学的な論点をいくつか提示したい。理論的には、近年の「社会」運動論の議論を踏まえた上で「住民」運動論の可能性について、実践的には、「学」として「学者」としていかに運動と関わるかについて検討する。