日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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沖縄島西岸から採取したビーチロック試料の放射性炭素年代と安定同位体比
*小元 久仁夫児野 秀史神野 賢一
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p. 101

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抄録
1.研究目的
ビーチロックは潮間帯で形成されるため、海水準変動や地殻変動を研究する際に良い指標となる。またビーチロックは貝化石・化石サンゴ・有孔虫などを含むため良い14C年代測定試料である。
正確な14C年代を得るためには、年代測定試料の安定同位体比(δ13C)を測定し、同位体分別補正をしなければならない。
沖縄島のビーチロックについて、砂村(1983)は60余例の存在を指摘し、Kawana and Pirazzoli(1985)は沖縄島の6地点から採取したビーチロックの14C年代(4400_から_790y BP)を報告している。
小元は、これまで南西諸島の18島からビーチロックを採取し、それらの14C年代を報告(2003ほか多数)してきた。また児野および神野は、平成14年度の卒業研究の際に沖縄島の海岸地形を調査し、ビーチロックや化石サンゴを採取した。
演者らがこれまでに沖縄島西岸から採取した試料について、14C年代測定と安定同位体比(δ13C)を測定した結果、新たな知見が得られたので報告する。

2.研究方法
(1)沖縄島で海岸地形調査を行いビーチロック試料を採取し、β-ray計測法により14C年代を決定する。
(2)14C年代測定試料の安定同位体比(δ13C)をMicromass社製IsoPrimeにより測定する。
(3)安定同位体比にもとづき、ビーチロック試料の14C年代について同位体分別補正をする。
(4)安定同位体比から、ビーチロックの成因に関わる炭素の供給源について検討する。(5)以上の資料にもとづき、沖縄島におけるビーチロックの形成年代・地殻変動・海水準変動などを考察する。

3.研究成果
(1)沖縄島の23地点から35個のビーチロック試料を採取した。ビーチロックの大部分は西海岸で観察される。
(2)上記の試料のうち、西海岸から採取した20試料について14C年代と安定同位体比(δ13C)を測定した結果を右表に示す。
(3)安定同位体比は、+4.06_から_-5.97‰ PDBの範囲に入る。また平均値は-0.64‰であり、最大値は平均値の約9倍である。
(4)海洋生物の安定同位体比は±2‰といわれているが、試料の半数以上の安定同位体比は、その範囲外にある。
(5)同位体補正年代は、481年から312年(平均401年)である。注:ocean reservoir correction value=400y
(6)同一層準から採取した試料の年代は、種類(物質)が異なっていても同位体補正により、その大部分は±3σの誤差範囲に入る。
(6)沖縄島西岸のビーチロックは、約7000y BPから数百年前までに形成された。

表 沖縄島西岸から採取したビーチロックの14C年代(暫定値:y BP)と安定同位体比(δ13C:‰)

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© 2003 公益社団法人 日本地理学会
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