抄録
1.はじめに石灰岩地域における二酸化炭素濃度はカルスト地形形成に重要な役割を果たす。特に土壌中の二酸化炭素濃度は高く、土壌と石灰岩との境界付近での溶食を促している。しかし、カルスト地域の二酸化炭素濃度についての実測値は僅かであり、その収支に関する情報も限られている。本研究では岡山県北部、阿哲台地域にある2つの石灰岩台地(高梁川右岸の熊野台と佐伏川左岸の宇山台)上で、土壌中の二酸化炭素濃度を2年間にわたって計測した。2.調査の概要阿哲台のカルスト地域は、草地となった秋吉台や平尾台と異なり、古くから畑地など多様な土地利用がなされている。本研究では、土地利用が異なる4つのドリーネ(直径30_から_80m)を選び、9つの観測孔を設けて、地表から60cmの深さにおける土中二酸化炭素濃度の計測を行った。土地利用は果樹園(観測孔1, 2)、林地(同3, 4)、水田付近(同5)、畑地(同6_から_9)である。観測孔は、温度計測用の縦孔と、土中気体採取用に埋設したチューブによって構成されている。計測は2001年5月31日・6月1日に開始し、現在まで継続している。3.土中二酸化炭素濃度の経時変化と環境因子計測した土中二酸化炭素濃度は明瞭な季節変化を示し、特に夏季の高温期に上昇する。夏季の値は冬季の10倍以上を示す観測孔が多い。ただし、観測値は最大でも28‰で、大気中の二酸化炭素濃度の約80倍程度である。降水量と対比させてみると、梅雨期を中心に降水が多かった2001年の土中二酸化炭素濃度が2002年の値よりも高い地点が多い。また、降水の間隔が開いている2002年の土中二酸化炭素濃度は変動が大きく、まとまった降水の後に値が上昇する。これらのことから、気温とともに降水の量と頻度が土中二酸化炭素濃度の変動に大きく影響していることが明らかである。土地利用別に見ると、林地で最も低く、果樹園・水田での値が高い。林地は気温および土中温度が他と比べて上昇せず、土壌中での微生物などの生物活動が抑えられるためと考えられる。