日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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平安京内部の土地利用と微地形の関係
*河角 龍典
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p. 133

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抄録
_I_.はじめに古代から中世にかけての土地利用と地形環境との関係については、主に条里プランの施行された村落地域を対象として検討が行われている。金田(1993)は条里型地割内部の土地利用と微地形の関係について、高橋(1994)は古代末に生じた河床低下と農業的土地利用変化との関係について明らかにした。他方、同じ方格地割を持つ条坊地割が施行された都市地域の土地利用と地形環境との関係については、河角(2001)が平安京を事例に、河床低下に伴う河川氾濫区域の変化と市街地変遷との関係について論じている。しかしこれまで、条坊地割内部の土地利用と微地形の関係については、不明な点が多かった。そこで本研究は、平安京を事例に、条坊地割内部の市街地の分布と微地形との関係について検討する。_II_.研究方法平安時代の地形環境は、1万分の1空中写真の判読より作成した地形分類図、50mDEMから作成した1m等高線図、ならびに埋蔵文化財発掘調査トレンチにおいて記載した表層地質断面図から復原した。他方、平安京の土地利用は、文献史学および考古学の研究成果を用い復原した。本研究では、これらの復原図をもとに、市街地の分布と微地形との関係について分析する。_III_.結果と考察 平安京の市街地の分布は、河川の氾濫区域の分布と関係しており、微地形よりもむしろ地形面レベルのスケールに対応するものであった。このように市街地と微地形との関係は不明確であったが、天皇に関係するの邸宅、すなわち院の分布は、地形帯_から_微地形レベルのスケールの地形環境と対応していることが認められた。ここでは、天皇に関係するの邸宅(院)の立地環境に焦点をあて分析を進める。まず、地形分類図との関係について述べる。天皇に関係するの邸宅は、地形面レベルからみると、段丘面_I_(中位段丘面)、段丘面_II_(低位段丘面)、段丘面_III_(完新世段丘面)に立地する。これらの地形面は、平安時代を通して洪水氾濫の影響を受ける頻度の少ない地形面であった。地形帯レベルからみると、宇多院を除くすべての天皇に関係するの邸宅(院)は、鴨川の扇状地帯に分布する。微地形レベルからみると、淳和院、朱雀院、神泉苑、四条後院は、旧河道を敷地内に取り込む。次に1m等高線図との関係について述べる。地形帯レベルからみると、淳和院、朱雀院、冷泉院、高陽院、堀河院、閑院、東三条院は、扇状地帯の傾斜変換点付近に立地している。微地形スケールからみると、高陽院、冷泉院、神泉苑、朱雀院は、北東から南西に伸びる谷地形上に立地している。一般に、こうした扇状地帯の傾斜変換点、すなわち扇端部分は地下水面が高くなる傾向にある。また、扇状地帯の谷地形、すなわち扇状地の旧河道も、淘汰の良い砂礫から構成される場合が多く、透水性が良いため地下水の通り道になりやすいという特性を持つ。これらの地形特性を踏まえると、平安時代の天皇に関係する邸宅(院)は、地下水面が比較的高い土地を宅地内に取り込むことを考慮して選定されている。平安時代の貴族にとっては、大内裏との近接性はもちろんのこと、水の得やすい土地を選定することも宅地を選定する上で重要な条件であったと考えられる。これまで、天皇に関係する邸宅(院)跡では発掘調査が行われており、園池を伴う寝殿造り庭園を付属していることが判明している。こうした宅地内に池を造営するという邸宅様式が、土地の選定に大きな影響を与えていたと推定される。_IV_.まとめ1)平安京条坊地割内部の土地利用は、様々なスケールの地形環境と密接にかかわる。その中でも特に天皇に関係する邸宅(院)の分布は、微地形に対応する。2)平安京の天皇に関係する邸宅(院)は、現在の価値観では宅地としては不適当な土地条件として評価される旧河道・谷地形を取り込みながら選定されており、土地に対する価値観の相違が認められる。文献金田章裕 1993. 『微地形と中世村落』吉川弘文館.高橋学 1994. 古代末以降における臨海平野の地形環境と土地開発. 歴史地理学167 : 1-15.河角龍典 2001. 平安京における地形環境変化と都市的土地利用の変遷. 考古学と自然科学42 : 35-54.
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© 2003 公益社団法人 日本地理学会
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