日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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農地・都市の混在する流域における河川中の溶存窒素及び有機炭素の変動
*峯 孝樹小野寺 真一重枝 豊実吉田 浩二齋藤 光代竹井 務
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p. 137

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抄録

1.はじめに
今日、都市からの生活廃水や農地起源の化学肥料の流入により河川の水質の悪化が問題になっている。本研究では農地と都市部が混在する流域において河川中の溶存窒素と溶存有機炭素に着目し、流量の変動にともなう成分濃度の変動を明らかにすることを目的とする。

2.研究地域及び方法
広島県のほぼ中央部を流れる黒瀬川を対象とした。河川延長50.6km、流域面積238.8km2の二級河川である。東広島市の並滝寺池を源とし、西条盆地、黒瀬盆地を南流し、呉市広から瀬戸内海に注いでいる。地質は主に広島花崗岩類、高田流紋岩類からなり、西条盆地、黒瀬盆地には西条湖成層が分布している。主にモニターした地点は並滝寺池より約17km流下した地点にある落合橋である。特にここでは5月14日から15日にかけて発生した総降雨量37mmの降雨イベント時の結果を示す。また洪水時には流量を測定し、採水も行なった。採水したサンプルはその場で電気伝導度とpH、水温を測定し、また実験室に持ち帰り、イオンクロマトグラフィーを用いて主要陰イオンの濃度、全有機体炭素計を用いてDOCを測定した。流量は河床断面を随時測量しながら水位-流量曲線をもとめ、水位を自記記録した。

3.結果と考察
1)降雨による窒素成分の変化
 降雨時及び無降雨時の陰イオン濃度の比較を表1に示す。無降雨時においてはNO2‐N濃度がNO3-‐N濃度をはるかに上回っているが、降雨時においてはNO2‐N濃度が消失し逆にNO3‐N濃度が上昇している。
 またCl濃度は約3分の1に低下していることから、降雨によって河川水が約3分の1に希釈されていることが示され、イベント時において消失しているNO2‐N濃度の変化は、3分の1程度の希釈低下では説明することができない。一方でNO3‐N濃度は上昇している。以上の結果、洪水時、酸化的な水の増加にともない急激に硝化が生じていることを示唆している。
2)降雨時の濃度変化
図1に各成分の濃度と流量の時間変化を示す。流量が増加するに伴い各濃度は減少しており降雨による各成分の希釈が起きていることが示された。
 図2に各成分のフラックス及び流量の時間変化を示す。流量にかかわらずNO3‐Nフラックスは一定であることからNO3‐Nの起源は降雨にかかわらず変化しないと推察される。DOCフラックスにおいては流量とともに増加していることから降雨イベントの発生とともにDOCの起源も増加していると考えられる。

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© 2003 公益社団法人 日本地理学会
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