日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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夏季の関東平野におけるヒートアイランドが海風循環に与える力学的影響
*佐藤 尚毅高橋 正明
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p. 15

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抄録
\Section{I\hspace{1em}は じ め に}近年では東京の都心では夏季に都市型豪雨が多発しており、ヒートアイランドとの関連に注目が集まっている。都市型豪雨は、関東地方に北東風の入りやすい気圧配置の日に発生しやすいことが明らかになりつつあるが、一方でこれまでの関東平野におけるヒートアイランドに関する数値実験においては静穏時や気候場を対象として行われたものが多い。北東風の入りやすい気圧配置の際には、大規模場が気候平均に近い場合とは異なり広域海風は生じにくく、東京湾や相模湾からの海風は内陸部までは進入しないことが多い。本研究では、こうした循環場においてヒートアイランドに対する海風循環の力学的な応答を数値実験によって評価し、気候場に近い南西風基本場のもとで広域海風が生じている場合の結果と比較する。\Section{II\hspace{1em}数値実験}ここではブシネスク方程式系に静水圧平衡を仮定した数値モデルを用いる。領域は東京を中心とした400km四方とし、現実の地形を考慮に入れる。水平格子間隔は5\,kmである。基本場における気圧勾配は地衡風の形で与える。地表面境界条件を国土数値情報の土地利用データをもとに与えた実験を標準実験として行い、都市域を田畑に置き換えた場合の結果と比較する。積分は適当な初期状態を設定して7時から行う。100\,mm/h近くに達するような降水系を再現することは困難なので、雲物理は考慮せず、積雲対流のきっかけになりうる境界層上端付近での上昇流の強さに注目する。基本場として与える地衡風は地表で弱い北東風とする。標準実験で再現された午後から夕方にかけての地上風、地上気温の分布は該当日のAMeDASによる平均的な観測結果と類似している(図は省略)。豪雨をもたらす積乱雲が発達を始める時間帯として13時から19時における高度1000\,mでの上昇流の最大値を各格子点ごとに求め図1に点線で示す。都心の北から北西にかけての領域で強い上昇流が見られる。次に都市域を田畑に置き換えて実験を行った。この場合の上昇流の最大値を図1に実線で示す。都心周辺では上昇流はあまり強くない。近年多発している実際の都市型豪雨の事例においては、豪雨をもたらす積雲対流は都心の北西で発生して南東方向に進む事例も多い。都市化した場合に都心の北西で上昇流が強化されるという数値実験の結果は、定性的ながら、こうした観測事実と整合する。基本場を気候平均に対応して南西風とした場合には、広域海陸風が再現されるが、都市化しても上昇流に大きな変化は生じない(図は省略)。ヒートアイランドによる上昇流の強化は、基本場に対応して決まる海風循環の形に強く依存しているといえる。
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