日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
会議情報

ニュージーランドにおける防災型土地利用規制
活断層上の土地利用規制の実例より
*村山 良之増田 聡馬場 美智子
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p. 169

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抄録
1.ニュージーランドの防災型土地利用規制(都市計画)に関連する法律 現在その中心をなすのは、資源管理法(環境管理法)Resource Management Actである。この法律は、多くの計画関連および自然環境保全や公害防止関連の法律を統合・廃止して1991年に制定された。災害を含む環境全般、土地利用計画全般について定めたものである。 土地利用計画の策定主体は市評議会(市)City Councilであり、災害情報の収集・普及、災害対策の立案を行う。同法に基づき市評議会は、災害情報等も盛り込んだ地図を含む地区計画District Planを策定する。そして災害多発地域の分譲合意(許可)subdivision consentの拒否、条件に従った土地利用合意(許可)land use consentの付与等の権限を有する。 他に、建築基準法Building Act 1991は、耐震建築基準だけでなく、地震リスク下にある建築物の同定、立ち退きまたは耐震補強の命令、地盤沈下・地すべり地区での建築許可の拒否等についても定めている。自治体の情報公開等について定めた地方自治体公務情報・会議法Local Government Official Information and Meeting Act 1987は、その中で、自治体が保有する土地区画毎の災害情報を申請者に土地情報公表摘要書Land Information Memodanda (LIM)を提供することを義務づけている。2.活断層上の土地利用規制の事例(1)ウェリントン市におけるマルチユニット住宅計画の土地利用合意(許可) ウェリントン市の既成市街地をウェリントン断層が横切っており、地区計画図には断層帯が図示されている。同市の地区計画では、1敷地に3世帯以上の建築を断層帯で行う場合は土地利用合意が必要としている。さらに、断層帯では高さ制限がかけられているが、開発計画の11戸のうち4戸が制限を超えていたため土地利用合意が必要となった。この開発計画は、厳しい建築基準適用等の条件で交渉・合意された。(2)アッパーハット市における住宅地開発の事例 ウェリントン市の北東約30kmにあるアッパーハット市では、ウェリントン断層を避けて住宅地開発がなされてきた。そのおそらく最初の事例は、トタラパークTotara Park開発である。ここでは1960年代末から住宅地開発が進められ、その計画当初から断層線上には住宅地を設けず広い直線上の道路や公園とした。同市では、1965年地区計画Upper Hutt Borough District Schemeで既に地震断層線を含む条件を土地利用許可の判断材料としており、同市職員への聞き取りでも、開発時に市の指導があったとされる。これはカリフォルニア州の活断層法(1972年成立)の前にあたり、活断層上の土地利用規制制度としてまたそのような住宅地開発事例としてきわめて早いといえる。現在の資源管理法に基づく地区計画では、地図に示された幅40mの断層帯に新たな居住可能建物等を建築することは裁量行為discretionary activityとされ、事実上不可能となっている。3.おわりに ニュージーランドの2つの自治体における活断層上の開発事例から、既成市街地における厳しい土地利用規制が困難でありこれに現実的に対応していること、一方新規開発地では事実上の厳しい土地利用規制が行われていることがわかった。いずれにせよ、市レベルに権限・裁量権があり、地域の受容可能性を含む実情に合わせた柔軟な対応が可能になっていることが、実際上の鍵であると考えられる。また、防災対策と都市計画の連携が弱い日本の状況と比較して、これらを含む広範な内容を一つの法律として定めた資源管理法(の成立過程および内容)は、おおいに参考になると考えられる。
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© 2003 公益社団法人 日本地理学会
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