日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
会議情報

横須賀市における谷戸の特性からみた市街地形成
*神宮 隆
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 188

詳細
抄録
1.研究目的 軍港により発展した横須賀,呉,佐世保などは,その立地条件から平坦地が狭い。また沿岸部は,軍港関連施設が立地したため,一般市街地は背後の谷に沿って発展し,都市化が激しくなると,斜面にまで開発された。これらの都市は,高度成長期以降になると,地形の人工改変による丘陵地・山地への開発,海岸の埋め立てによる市街地も顕著になってきた。 これらのことから,本研究では,横須賀市における都市景観の特徴である谷戸地区の市街地に注目し,谷戸の市街地形成とその特徴について明らかにすることを目的とする。2.研究内容 横須賀市の市街地形成の特徴を表す指標として,DIDの拡大や,明治以降の地形図類から水田の分布を用いた(図1)。それによると,1960年以前は,隧道建設により交通条件が改善された谷戸があるものの,一般的には,地形条件に制約されながらも軍港の影響にともなって拡大した。1960年以降になると,郊外化にともない市街地化の地点に,丘陵地が注目された。この市街地は,社会経済的要因,法的規制,地形的要因の影響を受け,その違いの差により,各谷戸の景観に差異を生じさせてきた。 このような市街地の形成に着目すると,谷戸の分布を明らかにすることは,都市構造を解明する上で重要と考える。そのために,土地条件図と地形図類から,谷戸分布図を作成し,谷頭における土地利用とその変容を調査した。その結果,1880年代始めから1990年代後半の変化は,農村的土地利用が75%から15%に減少し,一方,都市的土地利用が,14%から75%に拡大した。さらに細部では,未利用地の増加や谷戸本来の地形の消失もみられた。 次に,現在の谷戸への市街地を解明するため,低地部が市街地化された時期にもとづいて,都市成立期型(明治前期),都市外延期型(明治後期_から_昭和初期),戦後復興期型(戦後_から_1960年頃まで),高度成長期型(1960_から_1970年代半ば)の4類型を設定した。さらに,この分類結果を用いて,特徴的な谷戸を数例選定し,さらなる現地調査を実施した。3.結果 谷戸への市街地は,共通的な特徴を持つとともに,それぞれ特異な特徴を有していた。つまりこのことは,斜面の景観によくみられる。都市成立期型では,谷戸の斜面まで住宅地となっている一方,都市外延期型では,丘陵頂部とともに比較的斜面緑地が残される傾向があった。戦後復興期型では,丘陵頂部に住宅地が立地するものの,急傾斜地は斜面緑地として残されている。高度成長期型では,急傾斜地に斜面緑地が残されることもあるが,地形の人工改変が顕著であることが特徴である。 近年は,既成市街地である谷戸において,斜面緑地の開発が進み,その是非が問題となっている。
  Fullsize Image
著者関連情報
© 2003 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top