抄録
1. はじめに筑波山麓の平野部に強い逆転層が発達することは、山岳斜面の海抜100_から_300m付近の日最低気温が、麓より高温となることで知られていた。この温暖な気候を利用し、筑波山の西側斜面では古くはからフクレみかんの栽培が行われ、昭和30年代からは茨城県・水戸測候所などの観測結果(郡司1958)に基づき、観光みかん園の開設などを含む本格的なみかん栽培が始まった。1980年代は筑波大を中心とした研究グループ(吉野1982, 小林・腰塚1983など)によって筑波山域の地上気象要素の観測が精力的に行われた。本観測では斜面温暖帯の3次元構造とその成因を明らかにするとともに、農業や観光などの地場産業との連携を深め、大学における研究成果の社会還元を目的としている。2. 観測本観測は2002年の12月19日15時から20日0 8時にかけて筑波山の西側斜面にて行った。観測当日は20日の午前3時頃から急速に天気が回復し、快晴となった。アメダスの解析から、周辺域はで風速が1ms-1以下の比較的静穏な状況であった。水平方向の温度構造を捉えるため、温度ロガーを9カ所に配置し(図1の黒丸)、2002年の11月3日から10分おきに計測を行った(図2)。桜川でパイロットバルーンによる上層風の観測を行うとともに、桜川(20m)、つくし湖(75m)、光農園(145m)において、繋留気球による気温の鉛直プロファイル(図3)を1時間間隔で測定した。3. 結果 図1は12月20日04-05時(JST)の1時間平均の気温(1.5m)の水平分布を示す。高度200から250m付近に極大が見られ、比較的温度の高い層は筑波山の上部まで広がっている。図2は3地点における気温の時系列を示す。桜川と光農園の温度差は午前3時頃までは小さいが、朝方にかけて再下部の桜川では放射冷却によって急激に温度が下がっている。一方、つくし湖や光農園では桜川のような急激な温度低下は生じておらず、観測期間中には氷点下に至っていない。図3は繋留気球より得られた午前7時の気温の鉛直プロファイルを示す。桜川では強い接地逆転が生じており、つくし湖でも逆転層の形成が見られる。興味深いことに光農園では下層の大気は高度35m付近まで4.5℃前後となっており、桜川との温度差は5℃に達している。 学会当日はサーモグラフィーの映像および、パイバルによる上層風の観測結果や、アメダス等の解析結果も合わせて紹介する。4. 謝辞観測にあたり、酒寄観光みかん組合、同飼料作物生産組合より観測用地の整備等にご協力いただいた。また関連自治体のご理解無くしては観測が行えなかった事を特記する。本研究を進めるにあたり国立環境研究所の田中博春氏、同早崎将光氏には適切なご助言をいただいた。最後に、筑波大学自然学類学群生19名、修士課程環境科学研究科学生7名が観測を分担したことを付記する。 図1. 2002年12月20日04-05時の気温分布. 図2. 3地点における12月20日00時から10時までの気温の時間変化図3. 3地点における12月20日07時の気温の鉛直プロファイル.参考文献Ueda, H., M. Hori, D. Nohara, 2003: Observational Study of the Thermal Belt on Mt. Tsukuba. J. Meteor. Soc. Japan, (in press).