日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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南太平洋地域、トンガからの国際人口移動
行動論的アプローチ
*エサウ レイリン
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p. 38

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抄録
_I_ はじめに本研究では、トンガを事例に、国際人口移動の契機をはじめとする意思決定プロセスのあり方や、その社会的ネットワークおよび家族とのコミュニケーションに焦点をあてる。人口移動の行動論的アプローチでは、移動の意思決定にさいして、個人または家族という単位が重視されるとともに、意思決定プロセスがどのように環境から生じ、また影響を与えるかについて検討される (Boyle et al 1998)。ここでは、トンガからの移民にかかわる社会文化的側面を検討するために、この行動論的アプローチを用いる。
_II_ 既往研究南太平洋における国際人口移動に関する既往研究では、従属モデルおよびミラブ・モデルという2つのモデルが、大きな影響を及ぼしてきた(Hayes 1992)。従属モデルはコネル(Connell 1983, 1987, 1990)のこれまでの研究から、ミラブ(MIRAB)モデルは人口移動(Migration)、送金(Remittance)、援助(Aid)および官僚政治(Bureaucracy)の頭文字をとったもので、バートラム・ウォッタース(Bertram and Watters 1985, 1986)の共同研究から、それぞれ作られた。両モデルはいずれも、島内システムおよび国際システムから構成されている。さらに、島内システムには、社会文化的・人口学的・経済的の3つのサブシステムが含まれる。国際システムは、当該国と目的国を結ぶ要因、すなわち、外国の文化・教育、労働市場、援助、貿易、送金を扱う。本研究では、島内システムに含まれる社会文化的サブシステムの検討を主に行う。
_III_ 研究方法本研究はトンガを対象地域とし、面接及びアンケート調査を試みた。トンガにおける調査(2002年7_から_8月)では、海外で生活している家族をもつ150世帯、海外在住の200人の移動者に対して調査を行った。調査結果は、社会統計解析ツールであるSPSS ver.10.0を用いて、分析した。
_IV_ 調査結果の要約_丸1_拡大家族から核家族への変化や、海外への移動者の増加により、家族の規模は近年縮小している。1世帯あたりの、海外在住の移動者の数は、かつてより増えており、今では多くの世帯で2人以上の移動者がいる。このことは、高度な教育や技術を持っている者だけが移住できるという、従属モデルの含意とは対照的である。
_丸2_移動の意思決定にさいしては、拡大家族よりも核家族の役割が重要であることが判明した。ミラブ・モデルでは、意思決定は、個人よりも、むしろ拡大家族の枠組み中で行われる、とみなされてきたが、ここでの知見はそれとは異なる。
_丸3_1990年代以降における留学生移動の増加は、トンガに関するどの既往研究でも触れられてこなかった、最新の傾向である。さらに、送金が教育費のために一定程度使われていることは、トンガの将来の発展に貢献すると考えられる。
 _丸4_先行の既往研究では、トンガの多くの世帯にとって、送金への依存が高いことが指摘されてきた。しかし、今回の研究では、留学生移動が多いうえ、移動先の国での滞在期間も長く、送金への依存は低いことがわかった。
_丸5_移動者の婚姻状態の変化も調査した。移動者の約半数は、独身(学生)であった。移動後は、その半数以上が結婚している。移動先の国における、このような新しい社会的関係の形成は、トンガとの結びつきを弱め、同国への帰還の可能性を低くする方向に作用すると考えられる。
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© 2003 公益社団法人 日本地理学会
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