日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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大都市郊外地域における一般廃棄物行政の転換と住民の対応
*栗島 英明
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p. 37

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抄録
大量生産・大量消費システムが促進された高度経済成長期以降,「廃棄物問題」は最も身近な地域環境問題の一つとなった。廃棄物は,生産・消費過程で生じるが,中でも一般廃棄物は消費過程で生じ,地域住民一人一人が排出者であり汚染者となっている。そのため,一般廃棄物の排出は,住民の生活の場である地域の属性によって異なっている。また,そのために一般廃棄物の処理・処分は「廃棄物処理法」によって,地域事務を行う市町村の責任とされており,こちらも地域的に差異があることがこれまでも報告されてきた。
 住民のごみ排出は地域の属性に影響されるが,類似した地域属性を有する自治体間でも原単位排出量に差が生じることがある。これについて,他分野では有料化などの一般廃棄物行政が影響していることが指摘されている。
 本報告では,大都市郊外地域における一般廃棄物行政の転換とこれに対するごみ排出行動の変化などの住民の対応について,東京都日野市を事例として分析を行う。
 栗島(2002c)での報告のように,1990年代に入り,日野市をはじめとした多摩地域における一般廃棄物行政は,廃棄物処理方針の転換と最終処分場の残余不足に起因する搬入配分量の設定という外部的な要因にさらされた。その結果,日野市でも資源回収を開始したが,分別品目は少なく,資源物集積所の配置数も他市と比較して少なかった。このような一般廃棄物行政の差異は,住民の排出行動の差異へとつながった。また,中間処理施設の能力にも差異があった。これが,日野市においては最終処分場の搬入配分量の超過という結果をもたらし,日野市は新たに一般廃棄物行政を転換させる必要性が生じた。
 各戸収集の導入とダストボックスの廃止によって収集地点の増加と収集ルートの複雑化,それに伴う収集車の走行距離の増加がみられた。これは,単位時間あたりの収集量を減少させ,収集作業員の作業負担を増大させた。こうした変化の度合いは,道路環境や卓越する住居形態という近隣環境に左右された。
転換当初の効果は排出抑制よりも処理ごみ量の減量化にあったが,次第に総排出量も大きく減少した。転換前後における住民の排出行動の変化について,事例地区での住民アンケート調査から検討する。転換前の資源物集積所への近接性は,地区の近隣環境によって大きく異なっており,これが地区ごとのごみ排出行動に大きく影響していており,地区ごとに資源物の排出先には大きな差異があった。しかし,転換後には80%以上の世帯で資源物を資源回収へと排出するようになり,地区ごとの排出先の差はほとんどなくなった。
 こうした変化の要因を検討してみるならば,第1に従来から他分野において指摘されてきた有料化の導入による分別の徹底があげられる。可燃ごみと不燃ごみの排出が有料となったことで,資源物を無料の資源回収に排出するようになった。これに加えて,本研究では同一行政区内の排出行動の差異とその変化から,第2の要因として資源物収集における各戸収集の実施を指摘する。可燃ごみや不燃ごみと同様に,資源物も各戸収集となった。これによって,資源物の処理ごみへの混入に影響を与えてきた資源物集積所への近接性の差異が解決された。多様な地域特性を有する大都市郊外地域においては,同一行政区内においても排出行動に差があり,統一的な減量化政策を実施する障害となっていたが,この事例はそうしたものを乗り越えることにもなった。また,各戸収集は,住民間の結合が弱い地域においても,排出者を確定することができ,不当なごみ排出が行われても適当な措置を講ずることができた。
 また,「ごみ問題への関心」が行政の転換とそれに伴う広報活動によって芽生え,こうした住民意識の変化も排出行動の変化に影響したことを指摘しておきたい。
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© 2003 公益社団法人 日本地理学会
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