日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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LANDSAT/TMデータを用いた土地被覆情報解析に伴う課題の検討
*後藤 健介磯 望黒木 貴一
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p. 39

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抄録
1.はじめに
地球観測衛星から取得できる衛星データは、地球表面に関する種々のデータを持ち、そのデータの広域性、定量性、継続性といった特長を活かして地球環境の研究に利用されてきた。特にLANDSATデータは長期にわたる膨大なデータが蓄積されており、地形や環境などの経年変化調査に多く利用されてきた。
高分解能衛星の出現により、衛星データが空中写真の代わりに土地被覆情報解析に利用されていくことが今後期待されるが、これに伴って衛星データの需要が高まることを考えれば、LANDSATを含む衛星データから、どの程度の精度の土地被覆情報と土地被覆変遷に関する情報を入手できるかを改めて詳細に検討する必要がある。
そこで、本研究では福岡県太宰府市を対象として、LANDSAT/TMデータを用いて、衛星画像判読による最小判読可能領域の検討、および2時期の土地被覆分類図の作成による土地被覆変遷の調査を行い、これらの結果から土地被覆情報解析に伴う課題について検討した。解析に用いる衛星データは1986年5月12日と1999年4月30日のデータとした。
2.調査概要
まず、衛星データから作成できるトゥルーカラー画像、フォールスカラー画像、ナチュラルカラー画像の3種類のカラー合成画像を用いて、画像の判読が容易で、1画素(30m×30m)の大きさに近い対象物である溜池の数を判読した。この作業では、対象地の地理に詳しい者、そうでない者の2者で判読を行い、主観的な違いも検定した。また、判読できた溜池に関して、実際の溜池水域の長径、および短径を参考にし、LANDSATデータで、どれだけの大きさの溜池を画像判読できたかを検討した。
次に、2時期における土地被覆分類図を作成した。今回は教師付き分類を行い、現地調査を実施したほか、被覆状況を知る情報として国土地理院発行の2万5000分の1地形図、および1990年撮影の1万2500分の1空中写真(太宰府市所有)を用いた。分類作業を行う手法としては最尤法を用いた。この作成した土地被覆分類図から13年間の太宰府市の土地被覆変遷を把握するとともに、土地被覆分類がどの程度まで正確に抽出できているかを検討した。
3.調査結果と考察
3.1衛星画像判読
カラー合成画像における溜池の判読の結果、フォールスカラー画像とナチュラルカラー画像では、判読できた溜池の数に大差はないが、調査地域をあらかじめ知っている者の方が多少多く判読していることが分かった。トゥルーカラー画像は、黒っぽい色調で表示される溜池と森林がほとんど識別できないため、両判読者とも、ほとんど溜池の特定ができなかった。また、1990年の太宰府市基本図で確認できる86箇所の溜池のうち、2時期のナチュラルカラー画像の少なくともいずれか一方で判読された溜池は47箇所であった。
さらに、今回ナチュラルカラー画像上で判読できた溜池のサイズを実際の溜池の長径・短径と比較してみると、最小判読可能領域は約50m×30m以上であることが分かり、衛星画像判読によって土地被覆状況を判別するためには、最低でも2画素以上の連続した近似値反射率エリアが存在する必要があることになる。
3.2土地被覆分類図
今回の土地被覆分類は水域、森林、草地、市街地の4分類とした。当初はこの4分類に水田と裸地を加えた6分類で土地被覆分類を行ったものの、判別精度が低かったため、誤判別を最少とする目的で4分類とした。精度が低かった理由として、太宰府市では田植えが概ね5月中旬以降に始まるが、解析に用いたデータの観測時期もこの時期で、水田は野草が生えた状態で、草地と水田の反射率が近い数値になるためと考えられる。また、裸地が実際よりも多く選定されたが、これは裸地の土壌含水量によっては、反射率がアスファルトなどの人工構造物と近い数値になるためと考えられる。
図1は衛星データから作成した土地被覆分類図である。図中のA、B、Cの3箇所は、特に土地被覆状況が大きく変わった様子が顕著に現れている。A地区、C地区では森林や草地といった植生地域が市街地化しており、逆にB地区では、市街地が緑化されている状況が判読できる。これらの地区では、実際に区画整理事業や宅地開発などによる市街地化の進行や、河川改修工事に伴う緑化などが起こっており、その状況を土地被覆分類図が捉えていることが分かる。また、土地被覆状況別の面積を求めてみると、13年間で森林が4.2%減少し、市街地が5.3%増加している事実も分かった。
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© 2003 公益社団法人 日本地理学会
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