抄録
これまでに発表者は、80年代における多核化の動向を検証し、京阪神大都市圏においても消費活動における多核化が進展し、また就業活動に関しては多核化進展の兆しがみられることを論じてきた。バブル経済の崩壊、都心の地価下落などの課題を抱えた90年代を通じて、都心・中心市周辺域・郊外地域それぞれの地帯の就業活動、消費活動の中心の特性がどのように変化しているのか。本発表では、小地域単位で分析可能な80年・90年・2000年のパーソントリップ調査を用いて、都市圏住民の就業行動・消費行動パターンから、郊外核の特性を、都心域・中心市周辺域と比較しながら検証することとした。 パーソントリップ調査では小地域単位として、市区町村域より狭域な「入力ゾーン(以下、ゾーンと称する)」が、設定されているが、まず就業活動の核(就業核)については出勤目的トリップ数から、消費活動の核(消費核)については自由目的トリップ数から、流入トリップが流出トリップを大きく上回るゾーンを、それぞれの核としての特性を示すものとして抽出した(添付図参照)。さらに就業核ならびに消費核の、人の動きからみた特性の違いとその変化を調べるために、施設別の到着トリップパターンの違いを検討することにした。抽出された就業核・消費核それぞれ別個に、行方向に時空間を示す1980年・1990年・2000年の3年次の核ゾーン、列方向に18区分された施設への到着トリップ割合を示す時系列地理行列を作成し、クラスター分析(ウォード法)によって、核ゾーンのグループ化を行った。 その結果、就業核については、7つのグループに分類することができた。その主なうちわけは、オフィス関連施設への到着トリップが卓越するグループ、オフィス関連施設・消費関連施設の両方へのトリップが集中するグループ、オフィス関連施設と工場施設・作業場の両方へのトリップが集中するグループ、住宅施設へのトリップが混在するグループ、その他文教施設・厚生施設へのトリップが混在するグループなどであった(2000年におけるそれぞれのグループの分布については添付図参照)。これら各グループの分布傾向をみると、都心域ではオフィス特化、オフィス・消費関連のグループが多く、逆にこれらのグループは郊外地域ではほとんどみられなかった。都心域ならびに副都心と、副都心を除く中心市周辺域と郊外地域との間で、特性に大きな違いがあることが示された。 また消費核については、6つのグループに分類することができた。その主なうちわけは、消費関連施設・オフィス関連施設の両方へのトリップが集中するグループ、それに住宅施設へのトリップがわずかに混在するグループから、相当数混在するグループ、レクリエーション活動が中心となるグループであった。消費核については、郊外地域においても広く分布する傾向がみられた(2000年におけるそれぞれのグループの分布については添付図参照)。分布パターンをみると、依然として都心域に高次のグループが集中して分布するが、郊外地域にも、中次グループの核が広く点在する様子がみられた。さらに、80年代と90年代の各就業核・消費核のグループ間の変化を比較した結果、消費活動では、郊外の成長を示す変化が持続しているものの、90年代における就業活動の変化をみると、80年代ほどの大きな変化がみられなかった。また消費核についてみると、80年代ならびに90年代ともにグループ間の変化がみられたのは、そのほとんどが郊外核であった。その変化は全般的に、郊外核としてより成熟したグループへの移動であったが、90年代の変化をみると、隣接する郊外核の成長によって、低次レベルのグループに移動した郊外核もみられた。※(本研究は,平成15年度文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(B)(1)「21世紀の社会経済情勢下における我が国大都市圏の空間構造」(研究代表者:富田和暁,課題番号14380027)による研究成果の一部である。)
