日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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乾燥・半乾燥地域における持続的農業の発展のための塩類析出制御因子
*小口  千明八田 珠郎根本 清子
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p. 93

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抄録
【はじめに】 乾燥・半乾燥地ではにおける可溶性塩類あるいは交換性ナトリウムによる塩類集積現象が低地力土壌の一因となっていることが多い。このような農業限界地では土壌管理技術の開発が求められているが、そのためには塩類の析出や集積に関する特性解明が必須である。本研究では、塩類集積土壌の生成特性の議論に必要な塩類の析出を制御しうる条件を実験的に解明する。【塩類析出実験】 出発物質は、NaCl 、CaSO4、およびNaCl+CaSO4の70℃における飽和溶液 20 ml、石英砂 (中央粒径 675 μm) 100 g、および中間挟在層 (固相) としての非晶質ケイ酸球状体 (中央粒径 5156 μm) 20 gである。カラム中の上位、中位、下位 (飽和溶液の直上) の深度に中間挟在層を配置し、埋設深度および各種塩類溶液の差異による蒸発速度の差異を調べることを実験目的とした。実験開始後、重量変化を適宜測定した。実験終了後、紫外線により蛍光発色する塩類の特性を利用し、NaClおよびCaSO4の析出位置を可視化した。また、数種の方法により、化学分析を行い、固相析出に伴う成分の鉛直方向変化を定量した。【結果および考察】 中間挟在層を配置しなかったものには石英砂表面および表層に塩類が析出し、明瞭な蒸発の制御は認められなかった。また、飽和溶液の直上 (下位) に非晶質ケイ酸球状体を配置しても、表面に塩類が析出し、明瞭な蒸発の制御は認められなかった。れた。これに対し、上位と中位に中間挟在層を配置した場合には、塩類はこの層中に析出し、石英砂表面および表層における析出はほとんどなく蒸発も制御された。とくにNaCl溶液において、上位に中間挟在層を埋設すると蒸発の制御効果が高くなる。本実験より、その地域で卓越する土壌構成物質の粒径よりも粗粒の物質からなる中間挟在層を介在させるだけで、可溶性塩類に富む地下水の蒸発が制御され得ることが示された。すなわち、その地域に散在する礫などをある深さに埋設するだけで塩類析出が制御可能であることを意味している。本研究成果は、一般に発展途上国に多い塩類化が進行している地域における持続可能な農業の推進に関し、当該地域で調達可能な物質を用い、かつ、低コストで塩害に対処可能であることを示している。
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© 2003 公益社団法人 日本地理学会
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