抄録
I.目的
九州地方の中央部にある阿蘇カルデラの火口瀬に位置する立野から瀬田にかけては,局地的な東よりの強風の吹走することが知られている.佐川(2003)によると,この強風は「まつぼり風」,「阿蘇の朝おろし」等の呼称で呼ばれている.本研究ではこの東よりの局地風について,火口瀬周辺で実施した気象観測資料と既設の気象観測所の資料をもとに解析・検討をおこなった.
II.対象地域ならびに使用資料
対象地域は熊本県に位置する阿蘇カルデラ,および立野火口瀬を中心とする地域である(第1図).解析対象期間は比較的観測資料の揃う2002年11月10日から2003年5月26日とした.解析対象地点としては気象庁AMeDASの菊池,阿蘇乙姫,高森,阿蘇山,国土交通省所管の内牧橋,立野,戸下,ほかには菊池南消防署,そして今回現地にて風向・風速記録計や記録型温度計を設置した数地点である(第1図参照).III.結果
対象期間の各地点における風配図第1図に示す.地点により欠測の多い地点があるものの,次のことが読みとれる.風速の強い地点は阿蘇立野病院から吹田までの立野火口瀬に沿った地点である.戸下は南郷谷を流れる白川と阿蘇谷を流下する黒川の合流地点付近に位置し,しかも比高の大きい峡谷部の谷底に位置しているために風速は小さい.黒川第一発電所は火口瀬の谷底に位置しており,若干谷に沿って流れる気流の影響を受けているためか,ほぼ南北方向の風が認められる.この風向は黒川第一発電所付近の白川の流路方向と合致する.阿蘇カルデラ内の下野,長陽中は火口瀬内の様な強い風は確認できない.畑については周辺地形の影響のため,火口瀬を吹走する気流をとらえていないと考えられる.菊池南消防署付近では東よりの風,いわゆる「まつぼり風」の影響は弱く,またこの付近まで東よりの風が流下すると,水平発散と思われる風向(東南東)の卓越が認められる.阿蘇立野病院から吹田にかけて東よりの風(北東から東の風)の頻度に着目してみると,立野から内牧橋にかけて強い風の頻度が増大し,さらに吹田方向に向かうと,強い風の頻度は減少している.
文献
佐川正人 2003.「阿蘇おろし」に伴い発生した阿蘇カルデラの火口瀬付近を流下する層雲.法政大学大学院紀要 50:13-25.