日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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旧日本軍撮影の空中写真の特徴とその利用可能性
*長澤 良太今里 悟之渡辺 理絵
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p. 127

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抄録
はじめに
外邦図研究グループでは2002年9月,合衆国における外邦図の所蔵状況を行った。その際,合衆国議会図書館(Washington D.C.)に旧日本軍が撮影したとされる,中国の空中写真が多数所蔵されていることが判明した。そこで,翌2003年9月再度議会図書館を訪問し,これらの空中写真に焦点を絞った調査を実施するとともに,資料的に価値の高いと判断した空中写真についてスキャニング作業を行い,ディジタル情報として取得,日本に持ち帰った。
流出経路と保存状態
空中写真は議会図書館Adams館の屋根裏倉庫にあり,ここには終戦時に米国が満鉄から接収した資料が6_から_7万点も保管されている。これらの資料は,空中写真を含め1996年にワシントン文書センター(WDC)から移管されたもので,それ以前の流出経路の詳細は不明であるという。
 空中写真は撮影コース毎に数十枚から百数十枚ごとに簡易包装され,包装紙には地区名・撮影年月日・コース及び写真番号などが記入されている。撮影年は昭和17もしくは18年と記入されており,字体等から判断して満鉄関係者,接収に関わった日本人担当者が記したものと推察される。
撮影地域,枚数,撮影諸元など
空中写真の撮影地域は,現在の省名では江蘇省・安徽省で,五河,安准,界首鎮,阜寧,宝應などの地区で,総数723枚を今回スキャニングした。これらの写真は画角が30×30cmの密着焼で,その後の調査からツァイス社製RMLP20(焦点距離200.13mm)を用い,縮尺約2万分の1で撮影されたものであることが分かった。後処理と空中写真の利用手法の検討
日本国内に持ち帰った空中写真(ディジタルデータ)をモザイク処理し,現在の衛星画像と対比させて標定作業を行った。その結果,現在までに五河地区について撮影地点が確定され,ETMの座標(UTM,WGS84)をもとに幾何補正処理を施した。これによって,約60年前の中国の土地利用,土地区画が判読可能となり,現在の高分解能衛星画像とあわせて用いることで,その後の景観変遷を復元する貴重な資料を作成することができた。
 戦前の空中写真に関して,長岡正利氏より多くの貴重なご助言をいただいた。記して感謝の意を表します。
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© 2004 公益社団法人 日本地理学会
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