日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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実体鏡を使用せずに行う平野の微地形判読
*海津 正倫
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キーワード: 地形分類, 平野, GIS, SRTMデータ
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p. 129

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抄録
<問題の所在> これまで地形判読は空中写真の実体視によって行うことが一般的であった.とくに,自然堤防や浜堤列などの低地の微地形に関しては,実体視による方法は地表の起伏を直接把握して判読するため,きわめて有効である.しかしながら,空中写真が自由に手に入らない国や地域における調査では,写真の入手に非常に多くの労力や時間を使ったりすることも多く,たとえ,写真が入手できたとしても調査地域が広域の場合には写真判読に多大な時間がかかる.また,空中写真が容易に手に入る地域においても空中写真判読の職人芸的な部分をもう少し解消できないかという声もある. このような問題があるため,途上国などの比較的広域の調査で地形分類図を作成する場合にはしばしば衛星画像を利用することが行われてきた.それらの多くは,画像処理によって地表の被覆を区分し,その結果から微地形を類推して地形区分を行っているが,この分類法はあくまでも間接的な地形分類であって地形そのものを見ての判読ではない.その結果,実際の地形とは異なる判読結果を導いていることも多い.近年,CORONAの画像やオーバーラップした画像の得られる衛星画像を利用して実体視をおこない,地形分類図を作成することも試みられているが,画像のゆがみの存在や,わずかな起伏の読みとりが困難であるなど数多くの問題を残している.また,失明などのハンディキャップをもった人の場合,実体視による地形分類を行うこと自体が不可能である. 本報告では,このような従来の実体鏡や衛星画像を用いた地形分類の問題点を解消し,GISおよびSRTMデータを用いて比較的容易に微地形分類を行う方法を開発したので報告する.<SRTMデータ>STRM(Shuttle Radar Topographic Mission)はスペースシャトルSTS-99のミッションによる干渉合成開口レーダ(SIRC/X-SAR)によって地表の3次元計測と詳細な立体地形図作成を目的として取得された標高データである.標高値は干渉法で取得され,SARが雲などの天候にほとんど影響を受けないため,従来光学センサでは撮影が困難であった熱帯湿潤地域などでのデータ取得も問題なく行われている. このデータは北緯60度から南緯54度までの間の全ての陸域をカバーしており,NASAのサイトから無料で入手できるため,発展途上国など地形図等の整備が十分でない地域の地形調査に活用することができる.<GISによる3D画像の作成> 本報告では,衛星画像(MOS-1画像,ASTER画像)を使用し,SRTM-3標高データによって3次元化を行った.ツールとしてはArcGIS8.2のArcMapおよびArcSceneを使用した.使用した衛星画像は,バンドの統合を行い,さらに,画像をWGS84測地系, UTM投影法に変換して,ArcMapに取り込み,すでに位置情報を与えてある地形図への重ね合わせを行って位置情報を持たせた.この画像をArcSceneに取り込み,同じくWGS84測地系, UTM投影法に変換したSETM-3データを用いて立体表現した.<地形判読と地形分類図の作成> ArcSceneで表示した3次元画像を使って地形の起伏をとらえ,地形界を認定して地形分類図を作成する.地形分類図作成にあたっては,デュアルモニタを用い,別モニタに表示した衛星画像にレイヤをかぶせて,ArcSceneの3D画像にみられる傾斜変換線を書き入れた.とくに,微地形を分類する場合には,高さ強調によって地形の起伏を誇張させて容易に地形界を認定できるようにした.また,ナビゲートコマンドを使って3D画像を回転させたり俯瞰の状態を変化させたりしてさまざまな角度から地形をとらえ,より正確な地形界を引くことを試みた.<問題点>  SRTMの干渉SARによって取得される標高値は,地表被覆物の起伏を示していること,また,SRTM-3は,標高値はSRTM-1による9個のセルの平均値となっているため,細かい起伏を持つ地形が平滑化されているなどいくつかの問題点がある.
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© 2004 公益社団法人 日本地理学会
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