日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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仙台平野中部,名取川流域に発達する旧河道群の形成年代と沖積平野における河成堆積物の散布状況
*松本 秀明野中 奈津子久連山 寛子
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p. 157

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抄録
 仙台平野は南北約50kmの連続する沖積低地で,地盤高は大部分が5m以下であり,地表面には自然堤防,旧河道,後背湿地,浜堤列などの平野を構成する地形が明瞭に認められる。平野には性格の異なる3河川が適度な間隔をもって流入し,それぞれの河川沿いの地域に特徴ある3つの地形地域を形成している。北部の七北田川流域は中でも河成堆積物の供給量が比較的少なく,海進期に広がった内湾が,完新世後期においても広い潟湖として残存し,陸域の拡大は河成堆積物による潟湖の埋積として進行した。地表には潟湖の埋積に関わったと考えられる自然堤防地形が多く認められる。南部の阿武隈川沿いは地盤高3m以下と低平であり,第I浜堤列_-_第II浜堤列間の堤間湿地が広く,河川の溢流により形成された旧河道_-_自然堤防地形の発達が明瞭である。 これまで,七北田川流域および阿武隈川流域において,本流からそれ,後背湿地上に延びる旧河道_-_自然堤防地形の形成時期に関しては,2,600-2,400yrBP 前後および1,600-1,500yrBP 前後において,それぞれ極めて短期間に形成・放棄されていることが求められている(野中・松本,2004年春季大会要旨)。さらに,これらの河道放棄時期は,名取_-_七北田川河間低地に認められる複数の埋積浅谷地形の埋積開始時期(Matsumoto, 1999)と一致することから,海水準微変動のうち,海面の上昇期との関連について検討を続けている。 仙台平野中部 名取川沿いの地域は支流の広瀬川とともに,平野の中にあって相対的に河成作用が活発であり,平野西部には扇状地状の地形が形成されている。同時に海岸線に近い幅4kmの地帯には勾配1/1,000未満の低地が広がり,両者は穏やかな傾斜遷緩線を介して接している。前者の扇状地状地形の勾配は3/1,000前後であり,扇頂部の海抜は20m,扇端部は3m前後である。地表面には放射状に多くの旧河道地形が認められ,それらはそれぞれ海側の低地へ連続する。これらの旧河道は40-150mの幅をもち,層厚2-4mの腐植質粘土層によって埋積されている。埋積堆積物の下底から得られた試料をもとにC-14年代測定を行った結果,河道の放棄年代は,1,140±90,1,180±90,1,240±90,1,640±60,2,010±70,2,440±90,2,920±30,および 3,090±100yrBP 前後と求められた。このことから,本地域の河道形成・放棄年代には,時期的な共通性は“もとより”認められない。このことは,七北田川,阿武隈川流域の本流から後背湿地上へ延びる旧河道_-_自然堤防地形の形成・放棄時期に共通性がみられる事象とは対照的である。
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