日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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関東地方における介護保険制度後の事業者参入の動向と事業所立地の特性
*畠山 輝雄
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p. 162

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抄録
1. はじめに わが国では、近年の急速な高齢化と核家族化や女性就業の増加など社会の変化に伴う介護ニーズの増加、そして介護保険制度施行後、数年たったことにより制度の認知が上がったことから、介護保険サービスの需要が高まっている。それに伴い介護保険サービス事業者の参入が相次ぎ、事業所数の急増をみせている。しかし、事業者参入の状況には地域差がみられる。また、事業所立地についても、以前から「高齢者福祉施設は何もないところに立地している」というような問題点が指摘されてきた。このことから、今後のさらなる高齢化に向けて効率的な介護サービス提供を行うために、介護保険制度施行後の事業者参入の状況と事業所立地の特性を把握することが重要である。 そこで本発表は、介護保険サービス事業者の参入が盛んであり、なおかつ多様な供給主体がみられる関東地方において、介護保険制度施行後の事業者の参入動向について考察する。また、事業所の立地についてもサービス別に特性を明らかにする。 介護保険サービス事業者の参入についての研究では、宮澤(2003)1)が運営主体などから市区町村別の統計分析により考察している。本発表では、運営主体に加えて開設年、定員、運営主体の所在地などからより詳細な分析を試みる。また、市区町村単位の分析ではなく施設をポイントとして地図化し、人口メッシュレイヤと重ねGISソフトを用いて分析することにより、サービス別、事業所の属性別の立地特性を明らかにする。2. 分析方法 本発表の分析で扱う介護保険サービスは、福祉系では施設サービスの特別養護老人ホーム、通所サービスの通所介護、訪問サービスの訪問介護、医療系では施設サービスの老人保健施設、通所サービスの通所リハビリである。これらのサービス事業所について分析を行う。 分析には、WAM_-_NET2)の2003年12月31日現在のデータを使用した。使用したデータは施設名、住所、施設定員、運営主体、運営主体所在地、開設年である。各事業所の住所をCSVアドレスマッチングサービス3)により座標値化しそれを地図化した。これらをサービス別、施設の属性別にGISソフトにより分析を試みる。また、2000年国勢調査3次メッシュ統計との重ね合わせにより事業所立地の特性を明らかにする。3. まとめ 介護保険サービス事業者の参入動向は、介護保険制度施行後、在宅サービスにおいて営利法人やNPO法人の参入が都心から郊外地域において盛んであり、これらは小規模タイプが多いのが特徴的である。施設サービスも都心から郊外地域において地方公共団体や社会福祉法人、医療法人を中心に参入がみられたが、在宅サービスに比べると圧倒的に少ない。また、都心から郊外にかけての地域や北関東における中心都市では、近隣自治体に事業展開している事例が多くみられた。事業所立地については、訪問サービスが人口の多い地域に立地しているのに対し、通所サービスや施設サービスは人口が少ない地域に立地するというパターンが多くみられることがわかった。ただし、通所サービスにおいては立地に多様性がみられ、運営主体、定員により立地パターンが異なっている。注1) 宮澤仁 2003.関東地方における介護保険サービスの地域的偏在と事業者参入の関係_-_市区町村データの統計分析を中心に_-_.地理学評論 76:59_-_80.2) 独立行政法人福祉医療機構が運営するサイトhttp://www.wam.go.jp/3) http://fujieda.csis.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/geocode.cgi
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© 2004 公益社団法人 日本地理学会
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