日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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中国人留学生による日本の都市の位置認知に関する一考察
*堀本 雅章
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p. 163

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抄録
1.はじめに私たちが日常使用している地図は、球面上の事物を平面上に変換する際に歪みが生じる。一方、頭の中で描いた地図「認知地図」は、個人の経験、知識、生活環境等の相違によって歪みが生じる。本稿ではこのうち認知地図を取りあげるが、日本人を対象とした既存の研究で、居住地からの距離が長い、人口規模が小さい、認知率が低いと認知位置のズレが大きくなることが言われている。しかし、従来の研究のように日本人を対象とした場合、出身地等個人差にまつわる要因を考慮しなければならない。そこで本稿では留学生を対象とし、従前の日本人を対象とした研究と同様の結果が得られるのか否かを考察することを研究目的とする。2.調査・分析方法 調査対象者は、東京都多摩地域に所在する理工系大学の中国人留学生114人である。有効回答数は93で、大学院生が大半を占め、30歳前後の既婚者が多い。 調査方法は、海岸線のみを示したB4版の日本地図(方位、縮尺は記載していない)を、北を上にして配付し、国内の17都市のうち知っている都市のみ、その位置を記入してもらった。 分析方法は、緯度、経度をそれぞれ0.25度間隔に区切り、緯度0.25度を10ポイントとし(ポイントは距離の単位)、経度0.25度を8ポイントとし、これを1メッシュとした(北緯35度では経度1度あたりの距離は緯度1度あたりの距離の約0.8倍となるため)。次に、回答者が示した各都市の認知位置をメッシュ単位で東西、南北それぞれ集計し、認知された位置の中心地点を求め、これを認知位置の重心とした。さらに、認知位置の重心からのバラツキを見るために、東西、南北ごとに標準偏差を求め、それらの積に基づき分析した。3.結果遠距離に位置する多くの都市では重心のズレ、重心からのバラツキが大きく、人口規模の大きい都市や都市名認知率の高い都市は、正しく位置を認知される傾向があることが分かった。また、多くの都市では在日期間が長いと認知位置の重心のズレおよび重心からのバラツキは小さくなる傾向が見られ、ともに1%水準で有意な関係が見られた。
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© 2004 公益社団法人 日本地理学会
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