日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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堆積物の物理・化学特性を指標とした桑名断層の活動イベント層準の推定
*鳴橋 龍太郎, 須貝 俊彦, 藤原 治
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p. 164

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抄録
はじめに
 活断層の活動履歴をできるだけ長期に亘って高精度で復元することが,大地震の繰り返しモデルの構築などに重要である。そのためには,地層から断層活動を示す様々なシグナルを読み出す方法が必要である。その方法の一つとして,養老断層系桑名断層では,浅海性堆積物コアに多数の14C年代測定値を入れ,断層を挟んだ上盤・下盤の堆積速度の差を指標として,相対的に下盤側が低下する多数の地震イベントとその年代が明らかにされた(鳴橋ほか,印刷中)。この地震イベントの層準では,コア試料の化学組成や物理特性にも特徴的な変化が認められる。本発表では,断層活動の指標値としての地層の物理・化学指標の有効性について議論する。
研究方法
 三重県桑名市汰上地区は,後氷期の海面上昇により上盤側まで内湾が広がり,断層を覆った堆積物が連続的に保存されており,イベント層準の判別に好条件である。本研究で用いたコアは,活断層研究センターが桑名断層を跨いで掘削した群列ボーリングの一部で,下盤側のNo.200(コア長35m),No.275(コア長31m)と上盤側のNo.350(コア長18m)である(図1)。これらのコアの層序と年代は鳴橋ほか(印刷中)で報告した。コアから電気伝導度(EC)を5_から_10cm,帯磁率を5cm,C/N比を50cm間隔で測定した。
断層イベント時期
 3本のコアについて,合計82試料の14C年代測定値とK-Ah火山灰によって年代をコントロールし,詳しい堆積曲線・標高差曲線を作成した(鳴橋ほか,印刷中)。下盤側では堆積速度が急増する(断層の縦ずれイベントに相当)イベントが階段状に繰り返しており,縦ずれイベントに伴う現象と考えられる。
 標高差曲線_丸1_(堆積曲線No.200-No.350の差)と同_丸2_(堆積曲線No.275-No.350の差)は類似したトレンドを示すが,_丸1_による推定イベント時期が_丸2_よりも系統的に数百年程度早めに検出されることから,イベント後の埋め戻しは断層に近いNo.275の方がNo.200に先行したと考えられる。これらの理由により, No.275コアを基準とした結果,約7千年前から上盤が離水したとみられる約2千年前までに4ないし5回の縦ずれイベント(2回の歴史地震を除く)が検出された。
 各イベントの発生時期(断層近傍のNo.275が基準)を破線で示す(図2)。図2の網かけ部は,No.200コアの堆積速度が大きくなる区間(イベント後にNo.200で埋め戻しが起こっていた期間)を示している。
結果と考察
 EC,帯磁率,C/N比には,上記の地震イベントと連動した変化が認められる。ECは破線で上昇し,網部で振動を伴いながら低下する。帯磁率は破線部でスパイク状に大きくなる。C/N比は破線部で減少し,網部で増加する傾向をもつ。堆積物中のECの高低は海成・非海成の判別に有効であり,C/N比の増減も陸源・海成の指標となる。そのため,上記のような破線と網部での2パターンの変化は,浅海の縦ずれ断層の下盤側における,縦ずれイベント直後の環境変化およびその後の埋め戻しプロセスと整合的であるといえる。以上の分析結果は浅海の断層近傍の堆積物分析によって,真のイベント層準,およびpostseismicな埋め戻し堆積過程に対応する見かけのイベント層準の2つを読み取れる可能性を示している。そしてこの2パターンの変化は堆積速度変化から得られた,断層に近い場所が先に埋め戻されるという事実を例証しているといえる。
 また,上盤側では読み取れなかった7000年以前の層序についても,下盤側の3つの指標値それぞれについて深度23_から_4m付近に上記と類似したパターンの変化が見られる。そのためこれらの層位に未検出のイベント層準がある可能性がある。
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