日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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別府一万年山断層帯西部地域で確認された完新世の断層活動
*千田 昇松山 尚典竹村 恵二松田 時彦水野 清秀池田 安隆島崎 邦彦岡村 眞
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p. 59

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抄録
「別府一万年山断層帯」(松田,1990)は、文部科学省地震調査研究推進本部により、98の主要起震断層のひとつとされ、同本部の交付金による活断層調査が、大分県により進められてきた。本報告では、断層帯の西部にあたる崩平山地域(大分県九重町付近)での調査結果を述べる。 本地域には、更新世中期に形成された野稲岳、崩平山等の火山体が分布しており、火山体を地溝状に変形させている長さ数kmオーダーの短い正断層性の断層崖が多数発達している。一方、1975年には、マグニチュード6.4の「大分県中部地震」が発生しており、新しい時代の断層活動も示唆される地域である。以下、代表的な断層での調査結果を示す。1 高柳断層・須久保撓曲 調査地域南部には、九重火山と崩平山火山の間に前者から噴出した飯田火砕流堆積物(FT年代で4.8万年前;本調査のデータ)で閉塞された低地(千町無田)が広がる。この低地の南縁で、沖積面を変形させている撓曲(須久保撓曲)を新たに見出した。さらに、その近傍で、九重火山の新しい火山灰(1,500年前)を変位させている断層をトレンチ調査で確認した(高柳断層;図-1)。いずれも北落ちであり、地溝南縁を限る断層の最新活動と考えられる。2 熊の墓断層 この断層は、崩平山火山の山体に比高50mに達する南落ちの断層崖を形成している崩平山地溝の北縁を成す断層のひとつである。火山麓扇状地上の低断層崖でトレンチ調査を行い、1,500年前に九重火山から噴出した火山灰を変位させている断層活動を確認した(図-2)。3 扇山断層 この断層は、崩平山地溝北縁の断層の延長部にあたる。大分県中部地震の震源域に位置し、断層の延長部では、同地震の際に、民家等に数cmの変位を伴う亀裂が生じたことが報告されている。今回の調査では、この亀裂の位置で表土剥ぎを行い、耕作土直下に、この地震の際に形成されたとみられる雁行状に配列する亀裂群を見出した。 本地域では、従来、古い火山体の変形によってのみ断層が認定されていたが、今回の調査により、完新世にも繰り返し断層活動が生じたことが確認された。これは、本地域の地震防災を考える上で、きわめて重要な知見である。
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© 2004 公益社団法人 日本地理学会
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