日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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活断層・活構造のマッピングと解釈
*渡辺 満久
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p. 69

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抄録
1.はじめに: 我々は,空中写真判読や現地調査に基づき活断層を認定し,それらの活動性・断層変位地形の形成過程・過去の活動履歴などを検討している.その具体的な手法等については,ここで改めて述べる必要を感じない.ただし,その手法が他分野の研究者に正しく理解されていないのではないか,もしかしたら活断層研究はいまだにリニアメント解析の域を脱していないのではないか,といった疑問を感ずることがある. 活断層研究は線的な構造解析学ではない.活断層トレースの分布も含めて,面的な変動地形(活構造)の特徴に基づいて,どのような断層活動によって,どのように起伏が形成されるかをイメージしているはずである.変動地形の研究論文においては,このようなことは当たり前のこととして,活断層トレースのみならず関係する諸現象がマッピングされている.しかし,実際には,このような情報は「活断層トレースの付属品」という扱いになっていることがあるのではないだろうか.近年の活断層・古地震研究の進展は目を見張るものがあるが,もっと積極的に提言すべき場面が多く,最新の観測結果などを生かしきっていないように感ずることがある.ある意味で「原点に立ち返り」,変動地形学の進展を考える必要性を感じている.2.活構造のマッピングと反射法地震探査結果: 面的にマッピングされた変動地形情報には,その空間範囲に応じた深さまでの断層構造や変位量分布が反映されているはずである.もちろん,地表で得られるデータがすべてでないことは言うまでもないが,地表の活構造から地下構造の推定も可能であり,地表の活構造を満足しない地下構造はありえないははずである. 最近,地下構造のイメージングが進んでおり,変動地形研究においても重要な情報が得られつつある.しかし,変動地形との調和性を考えずに地下構造が検討されていることも少なくない.その理由は定かではないが,探査を実施する研究者に変動地形学への誤解があるように思われるだけではなく,変動地形研究者自身も,地形情報よりも探査結果を重視しているように見えることもある.地表変位が認められる部分において地下構造に異常があるかどうかを見るとしても,それらが本当に調和的なものであるかどうかについては,慎重な配慮を欠くことがあるように見受けられる.これでは,何のために活構造をマッピングしているのか理解できなくなる.面的な活構造を「活断層トレースの付属品」として扱うのであれば,変動地形学における活断層研究は,リニアメントなどの線的構造を扱う学問であると言ってよい.リニアメントを掘って偶然に断層を見出している,と誤解されても仕方ない.3.古地震の解析: トレンチ調査やジオスライサ調査によって,その活断層の最近の活動履歴を解明することが盛んに実施されている.断層活動イベントを読み取る根拠の明確さはともかくとして,復元された活動履歴によって将来予測が試みられる場面において,大きな不安を感じている. たとえば,解読された断層活動が重要であることは言うまでもないが,それだけで活断層の活動履歴のすべてを復元したかのように結論すること可能であろうか? 限られた活断層トレースから得られた限られた資料が,周辺の変動地形の特徴と調和しているかどうかが気になるのである.闇雲に別の断層活動を想定しようということではない.周辺の変動地形から推定可能な断層活動については,検討に値すると考える.また,評価対象となっている複数の活断層が近接している場合,それぞれを別々に評価することにも大きな疑問を感じている.地下構造のイメージングがなされていなくても,近接する活断層の関係について言及できる分野の1つが変動地形学であるから,活断層の相互関係を吟味することは可能であろう.今以上に,個々の活断層の活動履歴を総合して長期予測を立てる必要性があると考えている.トレンチ調査から見出せない断層活動や,証明されていない地下構造をもとに,活断層の活動履歴や長期予知を検討することに違和感を感ずる研究者がいることは理解できる.しかし,それらを考慮しないでよいということも,証明されてはいない.4.おわりに: 変動地形学においては,詳細な活断層トレースの特徴やその周辺の活構造が注目されてきたはずである.これらの情報は,地質構造学や古地震学にとって有益な情報であるが,変動地形学の知見によって関連分野の研究成果を見直すことは,変動地形学のこれからの進展にとっても重要なことではないだろうか.
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© 2004 公益社団法人 日本地理学会
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