日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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オンフォールト古地震学の展開:地震発生時期の解明を中心に
*奥村 晃史
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p. 77

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抄録
1. はじめに特定の震源断層から将来発生する地震を予測し,長期的な地震危険度評価と災害軽減に資するために必要なパラメータのうち,震源断層に関しては,地震発生率,破壊領域,スリップ分布が最も重要である.このうち地震発生率を決定するための地形・地質情報として,古地震学的な地震発生時期のデータ,最新の地質時代における平均変位速度が用いられる.この発表では,主にトレンチ発掘調査による地震発生時期の決定にかかわる成果と問題点を検討する.2. トレンチ調査の限界と年代決定の問題点1996年の震防災対策特別措置法成立以降,日本の活断層を震源とする地震の長期評価のために,数多くのトレンチ発掘調査が行われ,イベントの認定と年代測定が無数に行われている.しかし,複数の再来間隔と最新イベントの発生時期が求められ,信頼度の高い地震発生時期予測が可能な断層はごく限られている.その原因のひとつは,最終氷期(25_から_10 ka)の堆積物の欠如である.この時期は全般に細粒堆積物が少ないうえ,後氷期初期の河川作用による浸食の影響を多く受けている.平均的な再来間隔が数千年の活断層の再来間隔を検討するうえで,この時期のイベント発生時期の情報欠如は致命的である.トレンチ壁面でのイベント年代の決定は,変形を受けた地層と,その地層を覆う地層に含まれる年代資料を用いざるを得ず,直接イベントと関連した年代資料を得ることは不可能である.断層運動の度に必ず沈降と埋積が起こり,それ以外堆積は起こらないという理想的な状況以外では,イベントの年代決定は必ず不確かさを伴う.連続的に堆積傾向にある場所では,多数点・高密度の年代測定により,再堆積試料を排除し(図左)この不確かさを小さくすることができる.歴史時代のイベントの年代決定には,土器などの考古遺物の年代を用いることが多い.イベント前後の地層に含まれる考古遺物の年代からイベント発生時期を推定する手続きは放射性炭層同位体年代測定と同様であるが,考古遺物編年の時間分解能は放射性炭素同位体年代測定に較べて著しく低い.このため,考古遺物による年代は補助的な手段としてしか用いることができない.発掘地点の層序や,包含される年代測定資料にはトレンチ壁面ごとに明確な限界が存在する.限界の低い,つまり,年代情報に乏しいに壁面に限られた調査のリソースを浪費することは避けなければならない.そして,そのリソースを限界の高い壁面の発掘と高精度年代決定に振り向ける戦略が必要である.そして,戦略を立てるためには,年代測定と測定値の改良に関する技術の理解が必要である.3. 古地震年代決定の戦略樹木年輪補正によって得られる暦年は不規則な確率分布として表現される.複数年代資料の確率分布に層序や既知の年代値を加えベイズ理論を用いて確率分布を再計算する方法はBiasi and Weldon (1994)により提案されていた.OxCal 3.5 (Ramsay, 2000)を用いてイベント年代の確率分布を求め,さらにイベント間隔の確率分布を求めることが容易となった(図右).これにより,イベント年代と間隔の精度を直接検討することが可能となった.層序と矛盾しない多数の年代測定値と,いくつかの高精度な年代値の存在が重要なポイントとなる.
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© 2004 公益社団法人 日本地理学会
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