抄録
1.はじめに
地方都市において、中心市街地の空洞化が問題となって久しい。近年、それらが深刻化しその対応が迫られるようになっているのは、中心市街地を構成する重要な要素である商業機能の衰退が顕在化し、商店街の空き店舗の発生や大型店の撤退等が後を絶たないからである。そこで、本研究では大都市近郊の地方中核市である和歌山市を事例に、中心商業地の空洞化の進展状況を明確化するとともに、 中心商業地の活性化に向けた対策や推進体制のあり方を検討する。
2.中心商業地地の状況
和歌山市の商業は、南海和歌山市駅とJR和歌山駅のほぼ中間に位置するぶらくり丁周辺を中心に発展してきた。ここでは、3つの大型店と6つの商店街が一体化し、買回り品を中心に県下随一の広域商業エリアを誇っていた。しかし、鉄道駅から離れていること、モータリゼーションへの対応の遅れ等によって消費者の需要を充たすことができず、駅周辺の大型店や郊外・ロードサイドのショッピングセンター・専門店への顧客の流出を余儀なくされた。来街者も往時の半分程度に減少し、空き店舗の増加や大型店の撤退が顕著となっている。また、大阪市との近接性により、顧客の流出のみならず、支店・営業所が統廃合され、支店経済が弱まりやすく昼間人口は減少傾向にある。以上のような要因により、かつての賑わいが薄れ、空洞化や商業等低迷傾向が著しく、1998年に和歌山市は「中心市街地活性化基本計画」を策定するに至った。
3.中心商業地の内部構造・機能の変容
ここでは、2時点間の土地利用を比較し、さらにその間の各経営者の行動を整理し、内部構造の変容とその要因を明らかにする。また、そうした構造の変容が及ぼす影響を検討する。
全体的に買回り品の商店が後退し、最寄品の商店・サービス店が進出している。こうした店舗交替は、商圏の縮小化を示しており、より高次な商業地域である大阪市との競合関係、核店舗不在によるところが大きい。高級品を主とする高次な商店街であるぶらくり丁商店街は、その格を大きく後退させ、ゲームセンターやディスカウントスーパー等に変化している事例もみられる。また、立地条件の悪い商店街(東ぶらくり丁、北ぶらくり丁)では、大規模な多店舗展開を行う衣料品店・スーパーマーケットが立地している。立地条件の悪さが、こうした対応を選択させている。また、東ぶらくり丁商店街では、大型店の撤退・倒産の影響も小さく、地域住民に対応した最寄品中心の店舗構成が、商店街の基盤を支えている。一方、北ぶらくり丁商店街は、衰退化の進展が深刻であるが、近年は家賃の低下と市の出店支援制度により、空き店舗への若年層の新規出店がみられ、世代交代の過渡期とも捉えられる。しかし、市の出店支援制度は組合への補助であるため、組合間で制度利用数は大きく異なる。さらに、「ただ埋めればよい」という発想が根底にあるため、店舗間のバランスは崩れている。テナントミックスという観点に立った空き店舗対策の方法、運営主体が問われている。
4.中心市街地活性化基本計画とTMOの取り組み
和歌山市における中心商業地の活性化の取り組みは、商店街の枠を超えて青年部のメンバーが集結し、まちづくりの議論を始めたことに端を発する。それらは、商店街全体を動かし、さらに市の中心市街地活性化基本計画やTMO構想に大きな役割を果たした。しかし、計画策定後、大型店がさらに撤退・倒産し、さらなる衰退化が進んだこともあり、計画は大きく見直されている。そのため、ハード・ソフト両面ともに実行に移されたものは少ない。
また、TMO((株)ぶらくり、第3セクターの特定会社)にも、設立後多くの課題が残されている。まず、積極的にまちづくりの議論をしていた一部の店主が中心となって、TMOを設立したが、設立後全商店のコンセンサスを得られず、活動の足かせになっている。また、離脱する店主の存在により、組織基盤が弱体化しているとともに、TMO=中心商店街では、商店街の振興と捉えられやすく、市民の参加を阻害している。さらに、収益性の上がる事業が少なく、市や商店街からの受託事業が収益の大半を占め、主体的に活動できていない。
5.おわりに
しかし、現在和歌山市の状況は大きく変わり,最悪の状況もようやく底を打とうとしている。民間の投資が、中心市街地にも活発化してきている。これらとうまく融合した形での中心商業地の活性化が期待される。そのためには、商店街やTMOの役割を明確化するとともに、さらなる議論が必要である。