日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会春季学術大会
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三宅島2000年噴火に伴う泥流流出分布の把握について
セル分布型土砂生産モデルを用いて
*佐久間 進中山 大地松山 洋
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p. 115

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抄録
1.はじめに
本研究では、降雨による表面流出に伴う土砂生産モデルを構築し、降灰堆積域から土砂生産量を求め、土砂生産量をもとにした流域平均土砂生産高(Drainage-basin Average of Sediment-yield Height; DASH)を用いて、三宅島における2000年噴火の泥流発生地域を把握した。また、Sediment Transport Index(STI,Burrough and McDonnell 1998)を用いて泥流による堆積域と侵食域の推定を行った。

2.使用したデータ
データは以下のものを用いた。
・三宅島10mメッシュDEM(国土地理院)
・2000年噴火による降灰堆積厚(東京都三宅支庁土木課・アジア航測株式会社2000)
・空中写真判読結果(2000年11月8日,中山・黒田2002)
・火山灰の透水係数および有効空隙率(寺嶋ほか2001を参考に用いた。)
・レーダーアメダス解析雨量(2000年7月1日から12月31日)

3.解析方法
 以下の手法により解析を行った。
(1)DEMからDDMおよび斜面勾配を求め、さらにDDMをもとに流域面積を算出した。
(2)紙ベースの三宅島2000年噴火による降灰堆積厚をもとに、DEMと同じ解像度の降灰堆積厚メッシュマップを作成した。
(3)佐山・寶(2003)による土砂生産モデルを構築し、レーダーアメダス解析雨量および降灰堆積厚データをインプットとして、各泥流イベント発生日の土砂生産高を求めた。
(4)求めた土砂生産高および流域面積から、各泥流イベント発生日のDASHを算出した。
(5)求めた流域面積および斜面勾配からSTIを求めた。
(6)DASHに、空中写真判読結果による侵食域および堆積域を重ね合わせ、実際の泥流の流出状況との対比を行った。
(7)STIに、空中写真判読結果による侵食域および堆積域を重ね合わせ、STIの分布による侵食域および堆積域の推定を行った。

4.結果
構築した土砂生産モデルは、数ヶ月程度の比較的長期の解析では降灰堆積域を反映した良い結果が得られた。反面、日単位の、特に降灰堆積厚が厚いケースでの解析には良い結果は得られなかった。また、泥流は一般的に言われる降雨(例えば前線や低気圧起源のもの)だけによって起こるのではなく、火山噴出物中の水蒸気に伴う泥雨が原因となって起こる可能性があることがわかった。
分布型で得られたDASHからは、泥流の流出が確認された谷筋はもとより、流出の確認されていなかった谷筋での泥流流出も再現できた。このことからDASHは、降下火山灰の分布および堆積状況に即した泥流の流出分布を予測できる指標だと考えられる。
STIは泥流による堆積域の推定にはよい結果が得られたが、侵食域については明瞭な結果が得られなかった。
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© 2004 公益社団法人 日本地理学会
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