日本地理学会発表要旨集
2005年度日本地理学会秋季学術大会
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1分-1日の最大降雨強度曲線
*須田 芳彦
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p. 77

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抄録

【はじめに】 発表者はこれまでAMeDASデータを用いて降雨強度曲線にみられる特徴的な時間スケールを明らかにすることを目的とした研究を行ってきた(須田 1999).ここでは,地上気象観測所における1分値データが統計解析を可能にするまでに蓄積したので,1分?1日の時間範囲の降雨強度曲線を対象とした. また,発表者はこれまで特徴的な時間スケールを求めるのにTalbot式をあてはめていたが,ここではSherman式をあてはめ,両対数グラフ上で対象時間範囲に傾きの変化がみられるかどうかを調べた.これによって,地点によって異なる降雨強度曲線にみられる特徴的な時間スケールを見いだそうとした.【資料】 宇都宮・前橋・尾鷲・奥日光・潮岬・屋久島・種子島・与那国島の8地点の地上気象観測連続値(1分値)資料を用いた.対象期間は2000?2004年の5年間の暖候期(5?10月)である.いずれの地点も欠測分数は対象期間の1_%_未満である.【方法】  各地点ごとに1,2,4,8,16,32,64,128,256,512,1024分の11の集計時間に対して対象期間における最大値を検出し,1?1024分の降雨強度曲線を求めた. この曲線に対してSherman式(べき乗則)を両対数変換した線形回帰によってあてはめた. このとき1?1024分の時間範囲を区切った方がよいか,区切るのであれば,いくつにどこで区切ったらよいかをAICC(修正AIC)を用いて判断した.【結果と考察】1) 宇都宮・前橋では両対数グラフにおいて約30分のところで大きく傾きが変わる.雷雨の多い地点における降雨強度曲線の特徴を示している.2) 奥日光では1分から1日までの時間範囲に対して一つの式があてはまる.つまり1日までの時間スケールにおいてはsimple scalingが成り立っている.3) 屋久島と種子島を比較すると,1時間より短い時間スケールではほぼ同じ傾きであるが,1時間より長い時間スケールでは傾きが屋久島でより大きい.水蒸気を多く含んだ南から東の風に対して地形性上昇流が生じやすいところでは,より長い時間スケールにおいて傾きが大きくなり,大雨が持続しやすいことがわかる.4) ここで降雨強度曲線にみられる特徴的な時間スケールが地点によって異なることが明らかとなったが,さらに大雨の原因が時間スケールによってどう変わるのかを調べることで,この特徴的な時間スケールを気候学的に意味づけたい.【文献】 須田芳彦:水文・水資源学会1999年研究発表会要旨集,16-17(1999)

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