日本地理学会発表要旨集
2005年度日本地理学会秋季学術大会
会議情報

土地被覆に着目したヒートアイランドの緩和に関する都市気候学的研究(2)                       
舗装素材を用いた実験的研究
*松本 太福岡 義隆林 宏三郎
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p. 85

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抄録

1. はじめに昨今,ヒートアイランドに象徴される都市の温暖化が熱中症発生や熱帯夜日数の増加といった形で,人間生活にも影響を与えているといわれており,問題が顕在化しつつある.都市においては地表面がアスファルトやコンクリートなど人工構造物に覆われる割合が高く,これらの環境下においては,特に夏季には日射によって相当の高温に達する.そのヒートアイランド緩和対策の1つとして,コンクリートやアスファルトに代わる舗装素材の開発,利用が挙げられる.そこで,本研究では暑熱緩和に対する有効性を評価することを目的として,保水性,透水性の大きい素材など,材質の異なる7種類のブロックを用いて,12パターンの環境を設定し,気象観測を開始した.2. 調査方法実験施設は10m×5mの敷地を整地し,芝生を植え,その上に12パターンの区画を設定した.1区画は1m×1m(_芝のみを除く)でプラスチックポットに小型のブロック(素材)を36個はめ込む形となっている.気象観測は各区画,地上150cm,30cmにデータロガー付きのサーミスタ温・湿度計(株式会社ティアンドディ製 Thermo Recorder おんどとりRTR-53) を設置し,気温,湿度を2004年10月1日から毎正時測定している.なお,サーモトレーサーによる地表面温度の観測も2004年5月より開始している.3. 結果 地表面(地上30cm)気温は区画により気温差があったが地上150cmmの気温では差が見られなかった.気温が高く出ている区画に関しては土台が芝生ではなく,砕石ダストであることが要因として考えられる.また,これらの結果は晴天日に,時間帯としては最高気温の現れる顕著であった.区画による気温差は月別では2005年6月に最も大きくなっている.これには日射が関わっていることが考えられる.さらに今年度夏季のデータを追加していくことにより,より確実な評価が可能であることが期待される.また,地温や土壌水分等のデータも取っていきたいと考えている.4. 今後の展望ヒートアイランドによる暑熱の緩和対策については,日差しが強く,暑熱の影響が大きいと考えられる夏季における評価が非常に重要になってくると考えられる.現在の都市空間においては,コンクリート,アスファルト面の急速な減少,あるいは緑地面積の増加は望めない.しかし,都市公園や遊歩道,駐車場などの舗装面,あるいは屋上空間などでは,少なからず改善の余地があると考えられる.そのためにもコンクリート,アスファルトに代わる素材として,どの素材が暑熱緩和に有効であるかを明らかにする必要がある.大気・熱環境の保全といった面から環境を考慮した街づくりを行うためにも,本研究のような取り組みを進めていくことが今後大事になってくるであろう.

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