日本地理学会発表要旨集
2005年度日本地理学会秋季学術大会
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土浦市におけるヒートアイランド現象
*野島 由樹子野上 道男
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p. 88

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抄録

1.目的
茨城県の中規模都市である土浦市において,季節と時刻を変えて移動観測を行い,ヒートアイランド現象の実態を明らかにすることを目的とする.ヒートアイランド現象のうち,夏季を中心とする季節の日中の高温化は,コンクリート・アスファルトなどの面積の広い都心部において蒸発が少ないことによるものであり,夜間の高温化は人工排熱などが原因であろうと考えられている.すなわち都市気候発現の原因は季節と時間によって変化していると予想されている.このようなメカニズムを明らかにする出発点として,季節と時刻を変えた実態把握が必要であると考えた.
2.対象観測線と観測方法
ヒートアイランド現象は面的な現象であるが,個人的な卒業研究であるという制約もあり,土浦駅付近を通る東西・南北の観測線を対象とすることにした.土浦駅周辺は人口集中地区(DID)であり,郊外は農業地域(水田など)となっている.観測にはサーミスタ温度計を用い,電車と車による移動観測とした.電車による観測は土浦市を南北に通る常磐線(4.2km),車による観測は東西に通る道路(2.7km)を利用した.期間は2003年12月から2004年2月の冬季(早朝6:00_から_9:00)と2004年7月から8月の夏季(日中11:00_から_16:00)である.なお風が弱く,雲のない晴れた日に観測を行った.電車や車からの排熱の影響を避けるため,電車の場合には先頭車両の1番前のドアからセンサーを外に出して,車の場合には下車して観測した.
3.結果
郊外に位置するアメダス土浦の気温・風向・風速のデータを参考にした.DID地区の観測時の温度と比較すると一般にアメダスの気温が低かった.冬季・夏季の移動観測を通じて,DID地区の気温が郊外に比べ高くなるヒートアイランド現象が見られた.特に風が弱い日には日の出から1時間経過した後も,ヒートアイランド現象が明瞭に見られた.DID地区の高温は顕著であり,交通量の影響が見られたが,定量化はしていない.市の北と南の郊外の観測点は蓮田(年中水あり)と田(夏季のみ水あり)であり,冬季において気温に影響が生じた.霞ヶ浦・桜川も冬季は気温が低く,特に夏季は気温が低くあらわれた.北東よりの風の日は,無風あるいは北東風以外の日と比べると高温域が西よりに移動している傾向が見られ,霞ヶ浦から吹く風の影響と考えられる.

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