日本地理学会発表要旨集
2005年度日本地理学会秋季学術大会
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長野県市町村における環境問題の認知について
*北島 晴美
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p. 94

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抄録

1.はじめに
筆者らは,2003年2月に長野県の市町村を対象に「長野県120市町村の環境行政に関するアンケート」を実施し,アンケートの集計結果から,長野県市町村における環境行政の実態を把握し,環境保全に対する行政側の認識,環境関連産業との協業,環境NPOの取り組み等について考察してきた(柳町ほか,2004)。
各項目の集計から,従来の研究と整合的に,多くの項目において自治体規模が大きいほど環境関連施策の実施率が高いという,環境行政パフォーマンスが確認された。また,自治体の多くで最も深刻な環境問題は,廃棄物関連であり,最も力を入れている施策として廃棄物対策を回答した自治体が8割近いという結果であった。本研究は,アンケート項目をさらに詳細に分析することにより,市町村が自らの環境問題をどのように捉えているのか,について明らかにすることを目的としている。

2.研究方法
本研究では,アンケート調査の,「当面する環境問題Q7」をとりあげ,長野県市町村における環境問題の現状認識について分析した。Q7の環境問題のうち,現在特に問題となっていると回答した数が12市町村以上(回答市町村の11.9%)である上位13項目を用いて因子分析を行なった。

3.因子分析結果
因子の解釈可能性を考慮し,また,各因子にもっとも関連する項目が複数含まれることを因子数決定の基準として,上位3因子までを抽出した(表1)。第1因子(産業型問題因子),第2因子(廃棄物問題因子),第3因子(非大都市型問題因子)。

4.まとめ
全国市区を対象とした同様の分析(高木,1994)において,第2の因子として抽出された生活型因子は,長野県市町村においては抽出されない。
第1因子(産業型問題因子)に関しては,市・町の方が村よりもの認知が高い傾向がある。第2因子(廃棄物問題因子),第3因子(非大都市型問題因子)では,統計的に市・町・村による認知の違いがあるとはいえない。
長野県の4地域により,第1因子(産業型問題),第2因子(廃棄物問題),第3因子(非大都市型問題)に関して,統計的に認知の違いがあるとはいえない。
環境問題への認知の違いから,長野県市町村は3つのグループに分類される(表2)。Aグループ(産業型問題高認知),Bグループ(廃棄物問題高認知,産業型問題・非大都市型問題低認知),Cグループ(産業型問題・廃棄物問題・非大都市型問題低認知)。
長野県市町村の約70%は,Cグループ(産業型問題・廃棄物問題・非大都市型問題低認知)に分類され,Cグループの分布には地域差がないと思われる。
Aグループ(産業型問題高認知)は南信地域に多く,Bグループ(廃棄物問題高認知,産業型問題・非大都市型問題低認知)は東信地域に多い可能性がある。
当面する環境問題として,最も多くの市町村が回答した(74.3%),廃棄物の不法投棄は,第2因子(廃棄物関連問題)の因子パターンの値が最も低く,共通性も因子分析に使用した13項目中でもっとも低い(表1)。これは,この項目が他とは類似しない独自な項目であり,因子分析で抽出された共通因子を反映しない項目であることを意味する。
そのほかの多くの項目間の関連を反映して抽出された,第1因子(産業型問題),第2因子(廃棄物問題),第3因子(非大都市型問題)への認知とは独立して,廃棄物の不法投棄は,多くの市町村が認識する当面の環境問題であるといえよう。

高木恒一 1994. 自治体における環境問題の動向 _-_何を環境「問題」として認知しているのか?_-_.東京市政調査会研究部編『都市自治体の環境行政』 19-35,財団法人東京市政調査会.
東京市政調査会研究部 1994. 『都市自治体の環境行政』 財団法人東京市政調査会.
柳町晴美,沼尾史久,茂木信太郎,樋口一清 2004. 長野県市町村における環境行政に関する研究 _-_アンケート調査の結果分析_-_. 信州大学山地水環境教育研究センター研究報告.3,1-52.

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