日本地理学会発表要旨集
2005年度日本地理学会秋季学術大会
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近年の東京の都心周辺地域における土地利用高度化の実態とその歴史的形成要因
神楽坂地区の事例
*牛垣 雄矢
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p. 96

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抄録

近年の東京の都心周辺地域における土地利用高度化の実態とその歴史的形成要因!)神楽坂地区の事例!) The Actual Condition of High-rise Buildings and the Historical Formative Factor of Surrounding Area of the CBD in Tokyo!)Case of Kagurazaka District!)牛垣 雄矢(日本大・院)Yuya USHIGAKI(Graduate Student,Nihon Univ)キーワード:東京,都心周辺地域,土地利用,神楽坂地区Keywords:Tokyo,Surrounding Area of the CBD,Land Use,Kagurazaka District 1. 近年における東京の都心周辺地域の動向 近年,東京の都心やその周辺地域では開発が進められており,土地利用の高度化がこれまで進まなかった地域においても進行している.土地利用の高度化は都心的要素の一指標であるが,近年において土地利用の高度化が進行したこれらの地域が,都心的な地域へ変化したかという点に一つの関心がある.研究対象とする神楽坂地区は,これまでの東京の都市構造研究や都心研究により,都心の範囲の外側に位置する都心周辺地域として位置づけられる.明治中期から高度経済成長期中期にかけて料亭街とそれと関係をもった商店街として栄えたものの,土地利用の高度化は1980年代の後半まで進行しなかった.高度経済成長期以降は料亭街としての性格が薄れたが,逆に1980年代後半には土地利用の高度化が進行し,現在では都心的用途の代表的指標であるオフィス的用途も大きな割合を占めている.そこで本発表では,神楽坂地区における土地利用高度化の実態と,現在の土地利用の形成要因を歴史的側面より明らかにする.都心周辺地域における都心化の進行という観点は,この地域を対象とした研究の大きな関心の一つであった.これらの研究において,当時の都心周辺地域は交通アクセスが悪く地価が安いなどと指摘されたが,現在の状況はこれと大きく異なっている.神楽坂地区では,1980年代から地価が上昇したことに加えて,近くの飯田橋駅がJR線と地下鉄線で5つの路線が通って結節性を高めた影響もあり,土地利用の高度化が進行している.本発表は,このような近年の大都市における新たな状況の中で,都心周辺地域がどのように変化したかという点にも関心をおいている.2. 神楽坂地区における土地利用高度化の実態とその歴史的形成要因 神楽坂地区の土地利用は,江戸期は旗本屋敷地であったが,明治期に料亭が発祥すると,料亭が集積して料亭街を形成した街区と,旗本屋敷地の性格を引き継いで住宅地となった街区が存在し,これには土地所有状況の違いが大きく影響していた.高度経済成長期の中期には住宅地となった街区にも飲食店が集積し,現在では神楽坂地区全体で飲食店街を形成している.しかし,1980年代の後半から土地利用の高度化が進行すると,以前に住宅地であった街区内において建物面積の広い中高層建物が建設されたのに対して,料亭街であった街区内には建物面積の狭い中層建物が低層建物の中に混在している.この中に,地上げによって建設された建物面積が広い高層建物が立地し,規模の異なる建物が混在している.建物2階以上の用途は,建物面積の狭い建物には飲食店や広い面積を必要としない対事業所サービス業,アパートや,これらが混在して利用されているのに対して,建物面積の広い建物はオフィスビルやマンションとして利用されている.このように,近年における土地利用の高度化により,神楽坂地区内では建物規模や用途において都心的な性格となった街区と,建物規模や用途が混在して都心周辺的な性格を強めた街区が存在した.その背景には戦前における土地利用や土地所有状況の違いなど歴史的な背景があった. 図1 2001年の神楽坂地区における建物面積文献石丸哲史1988.福岡市における都心周辺地域の土地利用変化.人文地理40:99-117.小林 博・斉藤光格・成田孝三1976.都市地域の都心部周辺地帯!)1975年秋季大会シンポジウム!).地理学評論49:141-155.沢田 清1982.日本における大都市の都心.地理誌叢24(1):19-30.戸所 隆1986.『都市空間の立体化』古今書院.

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