日本地理学会発表要旨集
2005年度日本地理学会秋季学術大会
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熊谷市における家庭ごみ排出量と原単位の検証
*元木 理寿
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p. 97

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抄録

1.はじめに 近年,家庭ごみの調査は,京都市環境局をはじめとして,多くの自治体によって量,質ともに詳細な調査が行われるようになった.小口(1978)はごみ集積所の実態把握を行いながら家庭ごみの地域的差異を検討しているが,家庭ごみの性格上,地域調査が行われることは少ない.元木(2004a)は,家庭ごみ排出原単位を利用して,家庭ごみ排出量の地域的分布を把握することは地域環境を考える上で重要であるとした.しかし,家庭ごみ排出量には地域的差異がみられるにもかかわらず原単位は市町村の値を代表させているため, 排出特性が平均化されてしまうという問題点が残っている.本研究では,埼玉県熊谷市を対象として家庭ごみ排出の実態を捉えるために,ごみ集積所で計量調査を行った結果を報告する.2.熊谷市家庭ごみ排出の概要 熊谷市において家庭ごみの排出方法(出し方)は,1996年9月末日まで,可燃ごみ,不燃ごみ,粗大ごみの3種類の区分であった.それ以降その分類方法は細分化されつつある.また,可燃ごみの収集区域は月・木曜日と火・金曜日の地域に区分されている.各ごみ集積所は,20世帯以上を基準として設置されているが,その規模や範囲は地区自治会ごとによって異なる. 3.調査方法 熊谷市内には約2,000ヶ所のごみ集積所が存在する.この中から選定した幾つかのごみ集積所において,観察を行うとともに各家庭より排出された家庭ごみの個数と重量を計量することとした.具体的には,排出される家庭ごみの中でも最も占める割合の高い可燃ごみ(生ごみ,紙ごみ,etc.)を対象として,可燃ごみ(袋)をバネ秤で計量することとした.また,各ごみ集積所に集める範囲とそこに排出する世帯および人数について聞き取り調査を行った.計量期間は, 2004年11月28日_から_12月9日(前期とする)と2005年5月16日_から_5月27日(後期とする) に各4回(1週間に2回)ずつ行った.4.結果および考察 熊谷市の1人1日あたり可燃ごみ排出量は1994年までは増加傾向であったが,それ以後横ばい状態にある.2003年にはその量は639g(原単位とする)であった.今回の計量調査では,ごみ集積所ごとの排出袋数,排出量による一定の傾向をみることができた.住宅地では前期が518_から_669gとなり,統計から算出した原単位とほぼ等しい値を示した.後期は588_から_1,060gとなった.観察から前期と後期の排出量の違いは,後期に家庭の草木などが増えていたことによる季節的なものによると考えられる.商店街では,可燃ごみ原単位に比べて1,000g以上の値を示した.これは可燃ごみ収集日に可燃ごみ以外のごみがみられ,事業系ごみが混入していたことが考えられる.熊谷市郊外では,可燃ごみ原単位に比べて約370g少ない値を示した.庭や農地での燃やす,埋めるといった自家処分量と関係があると考えられる.事業系ごみが家庭ごみに混入していることや農村部での家庭ごみ排出量が少なくなってきていることはこれまでも言われてきたが,今回の調査ではそれらを実証する結果がみられた.また,家庭ごみ排出については各家庭の排出量に差はあるものの,ごみ集積所における家庭ごみの定量把握により地域の特徴示す傾向がみることができると考えられる.本研究は文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業オープンリサーチセンター整備事業(ORC)内の「荒川流域における土地被覆変化に伴う水辺環境の変遷および修復に関する研究」(代表:渡邊泰徳)および公益信託熊谷環境基金による研究成果の一部である.

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© 2005 公益社団法人 日本地理学会
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