日本地理学会発表要旨集
2005年度日本地理学会秋季学術大会
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町田市における近年のマンション供給と居住者の特徴
*鈴木 智
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p. 98

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抄録

I 研究の目的 バブル経済崩壊後、地価の下落と不良債権化した土地の放出などを背景に、マンション供給が続いている。この現象は、条件が揃えば都市規模に関係なく起こり得るが、とりわけ東京都心部で顕著であり、その動向への関心は高く研究報告も多い。一方で、東京大都市圏郊外においても同様にマンション供給が盛んだが、それに関する研究報告は少ない。しかし、団地や一戸建て住宅での生活が一般的であった大都市圏郊外において、駅前を中心に安価なマンションが供給されることで、居住構造の変化や新たな生活スタイルの創出が予想され、それらを把握することは重要である。そこで本研究では、東京大都市圏の郊外都市・町田市を対象に、近年の分譲マンションの供給と居住者の特徴を明らかにすることを目的とする。II 研究の方法 分譲マンションの供給に関しては、不動産経済研究所の全国マンション市場動向を用い、マンション居住者に関してはアンケート調査を行い、その結果をもとに考察した。なお、アンケート調査は、町田駅周辺(中心市街地)、それ以外の駅周辺(駅前)、駅から徒歩圏外(郊外)の3区分に分けて行い、比較分析した。III 研究の結果(1)分譲マンションの供給 町田市における近年の分譲マンションの立地には、中心市街地、多摩ニュータウン開発との関連、倉庫の跡地利用のように、地域性が反映されている。いずれの地域でも、最寄り駅から徒歩10分以内の場所への供給が多いが、幹線道路近隣への立地も見られる。マンションの販売単価は、地域性の影響を受けるものの、中心市街地、駅前、郊外の順に安くなる傾向にある。マンション内の駐車場は、中心市街地マンションのみ賃貸料が非常に高い。逆に、駅前マンションであれば、低価格で1世帯1台分を確保できる。一方で、占有面積は、いずれのマンションも70_m2_以上を有しており、ほとんどがファミリー向けの物件となっている。(2)マンション居住者の特徴 マンション居住世帯は、駅前・郊外マンションで1次取得層に偏るが、中心市街地マンションでは2次取得層の割合も多く世代のバランスがとれている。2次取得層の多くは、首都圏外を出身地とし、居住地の郊外化を経験している。一方で、1次取得層も首都圏外を出身地とする割合が高いが、郊外第2世代の存在を含めすでに若年期から東京大都市圏郊外での生活を経験している居住者が多い。 世帯主の通勤先は、いずれのマンションでも東京特別区や横浜への割合が高い。市内の割合は低く、マンション供給による職住近接はほとんど実現されていない。 居住地選定理由では、中心市街地マンション居住者と駅前マンション居住者との違いはほとんど見られなかった。しかし、居住後の満足感では、大型店や商店の多さといった商業機能の専門性の点で有意な差が認められた。(3)東京都心部にはない魅力と問題 町田市に近年供給されたマンションは、都心部に比べ安価なのに加え、特に駅前マンションは鉄道と車両者の交通利便性と充実した生活環境の魅力を併せ持つ。また、中心市街地マンションは、郊外都市特有のコンパクトな市街地に東京都心部の最新の魅力が凝縮されており、それらを徒歩で気軽に利用できることが、東京都心部にない魅力として評価されている。しかし、居住者自らがミニ新宿・渋谷と呼ぶように、文化的魅力が乏しいことに加え、コンパクトゆえ繁華街特有の機能(風俗店等)の影響を、核家族や高齢世帯が身近に感じてしまうという問題も有している。

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