日本地理学会発表要旨集
2005年度日本地理学会春季学術大会
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愛媛県今治市における商業集積の再編と中心商業地の変容
*安倉 良二
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p. 38

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抄録
 本研究は,愛媛県東予地域の中心都市である今治市における中心商業地の変容について,郊外地域における大型店の立地に伴う商業集積の再編を前提に述べることを目的とする。
 今治市の郊外地域における小売活動は,1990年代後半に大型ショッピングセンターが相次いで出店したことにより,急速にさかんになった。今治市では,大規模小売店舗法(大店法)の運用が厳しかった1970年代後半から1980年代にかけて,大店法の調整対象外の売場面積300_m2_以上の店舗に対しても商工会議所による出店指導が行われ,郊外型店舗の出店は事実上,規制されていた。しかし,大店法の運用が緩和された1990年代以降は,それらの規制がなくなったのをはじめ,ショッピングセンターの立地に適した工場跡地の発生や道路交通網の整備が進んだ結果,中心商業地の衰退を伴う商業集積の再編がなされた。
 他方,中心商業地の大型店をみると,1970年代前半に立地した大手スーパーの閉鎖やフランチャイズ契約の解除に伴う空きスペースの問題がみられた。だが,2003年には閉鎖された大手スーパーの跡地に食料品スーパーが新たに出店し,中心商業地の住民がもつ消費需要に対応した動きとして注目される。また,中心商店街においても空き店舗の増加が顕著である。しかしながら,2000年以降,中心商店街では空き店舗の市民ギャラリーや民芸品店への転用をはじめ,商店街ホームページの作成,共同の販促事業といった商業活性化に取り組んでいる。これとは別に居住面からの再生を目指す動きもあり,中心商業地における「まちづくり」の方向性は多様化している。
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© 2005 公益社団法人 日本地理学会
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