日本地理学会発表要旨集
2005年度日本地理学会春季学術大会
会議情報

古地磁気による関東平野西縁の上鹿山面・狭山面の編年
*植木 岳雪
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 5

詳細
抄録
本研究の目的は,関東平野西縁の丘陵およびその構成層の編年精度を向上させることである.そのため,丘陵構成層とそれを覆うローム層の古地磁気測定を行った. 関東平野の西縁には,鮮新・更新統から構成される丘陵が平野に向かってはりだしている.そのうち,狭山丘陵,阿須山丘陵の東端部および高麗丘陵の東部は,それぞれ芋窪礫層,上部豊岡礫層および上鹿山礫層から構成され,その堆積面は狭山面,阿須山面および上鹿山面と呼ばれている(皆川・町田,1971;町田,1973).これらの地形面は,58?69万年前に噴出した貝塩上宝テフラ(KMT)に直上を覆われており,狭山面および阿須山面は海洋酸素同位体ステージ17?16に形成されたと考えられている(鈴木,2000). 古地磁気測定用のキューブ試料は,上鹿山礫層と芋窪礫層の最上部のフラッドローム層とそれを覆う風成ローム層から,合計8層準で採取した.各キューブ試料を,80 mTまでの交流消磁実験,あるいは650 °Cまでの熱消磁実験に供し,残留磁化の方向と安定性を調べた. いずれの層準から採取された試料に対しても,交流消磁実験と熱消磁実験で同様な消磁結果が得られた.そして,すべての層準が正帯磁であった.熱消磁実験では,粘性残留磁化の影響のない高温段階まで安定な磁化成分が見られることから,これらの正の磁化極性はブリュヌクロンの間に獲得された二次的なものではないと考えられる.このことから,上鹿山面および狭山面は,ブリュヌー松山クロン境界の78万年前からKMTの噴出した58?69万年前の間の中期更新世前期に形成されたことになり,前期更新世にさかのぼることはないと判断される.
著者関連情報
© 2005 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top