日本地理学会発表要旨集
2006年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 310
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東京都区部の親水公園における環境・防災機能評価に関する研究
*坪井 塑太郎
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抄録
都市における河川を含む「水辺」のオープンスペースがもつ意義は,単に都市環境の向上に寄与するだけでなく,矩形の公園と異なり線帯状の形態を持つことから,災害時の防災機能など,その空間には多様な機能を併存させているものと考えられる.わが国において1980年代以降に登場した,水辺の見直しの機運は「親水」を旗印に人間と水辺との「直接的」関係を構築する思想を生み出し,親水公園に代表される様々な施設が全国的に展開され,現在では幅広い認知が得られるようになっている.しかし,一方で美観を過度に重視するあまり,極めて造形的な空間が供されているものや,水辺に偏った生態系を生み出す結果を招いているものなどもあり,しばしば批判の対象ともなっている.これは,親水の概念が主として当初,プラスの価値観を含んだ快適性の追求のみをイメージすることにその要因があるものと考えられる.しかし,今後,水辺を都市内部に有効に存立・存続させていくためには,日常的なアメニティの向上にとどまらず,非日常的な防災・減災空間としての意義も併用する必要がある.近年では,より自然に近い形での河川改修方法である「多自然型工法」が開発され多くの河川で導入が図られているが,自然そのままの河川を都市内部に復活させることは非現実的であり,水辺を都市機能のひとつとして位置づけていくためには,日常と非日常両視点からの複合的整備のあり方を検討していく必要がある.本研究では,「水辺」を単体として扱うのではなく,水辺を含む地域全体をひとつのまとまった空間として捉え,それらを住環境の中で位置付けることにより,居住者の評価から「環境」「防災」双方の機能の特徴を明らかにすることを目的とする.
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© 2006 公益社団法人 日本地理学会
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