日本地理学会発表要旨集
2006年度日本地理学会春季学術大会
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アンケートによる福岡県西方沖地震の影響調査
*磯 望黒木 貴一後藤 健介田中 夢見水本 茜沖原 美央佐々野 理恵藤原 あや
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p. 25

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抄録

1.福岡県西方沖地震とアンケート調査 福岡県西方沖地震は2005年3月20日午前10時53分に発生したM=7.0の地震である。この地震では死傷者1088名,損壊建物8997棟におよぶ被害となったが,特に福岡市内のビル被害や玄界島の擁壁崩壊に伴う建物被害などが注目された。この地震の影響について,1)福岡県内5大学などで約1ヵ月後に学生アンケートを実施し,その影響について調査した(有効回答数2517)。また,2)西南学院舞鶴幼稚園と同学院早緑子供の園(保育園)保護者に約4ヵ月後にアンケートを実施し,小児に与えた影響についても調査した(有効回答数160)。調査結果の一部は既に報告しているが,ここでは,その後整理した心理的な地震の影響を中心に報告する。2.地震が与えたイメージ この地震を体験した人々の抱いたイメージを調査するために,1)の調査の自由記述欄をエクセルで整理し,記述の多い語を抽出した。自由記述欄には65%が記述しており,印象が強かったことが伺える。分析結果から,「驚・ビックリ」が第1位,「恐・怖」が第2位,「初めて」が第3位の頻度で出現することが確認された。「驚・ビックリ」の説明には,「予測されていない福岡周辺の地震であったこと」,「初めての強い震動体験」,などがあげられた。「恐・怖」の説明には,「地震の恐怖」,「余震の恐怖」,「初めての体験で怖かった」,「家屋倒壊の危険」,などがあげられた。回答者の地震時にいた位置をGISソフト(MANDARA)で解析すると,西日本各地に分布するが,震動の強さと地震イメージとの地域的関連は判然とはしなかった。3.幼児に与えた地震の影響 幼稚園児と保育園児の調査からは,約4割の子供に地震後の生活に影響が表れたことが判明した。主な影響は「一緒にいないと不安がる」,「一緒にいないと怖がる」,「甘えるようになる」,「寝つきが悪い」,「夜泣きが増えた」などである。これらの変化は男児(4割)より女児(6割)に影響が多く出た。地震後の幼児への影響は,揺れの体感の大きかった家ほど多く出現すること,また地震の最中の恐怖感の強かった子供ほど影響を受けていること等が判明した。また,年齢の下がるほど影響が大きく出る傾向も認められた。これらの結果は兵庫県南部地震後の小学生の調査結果とよく似た傾向となった。4.地震の影響の性差 学生を主とした地震体験は,怖さや驚きについては明らかに女性のほうが男性より大きく感じている。恐怖感のデータについてはGISソフト(ArcView)を用い,Inverse Distance Weightによる補間図を作成すると,糸島半島から佐賀平野中部にかけてと,直方を除く筑豊地域などで女性の恐怖感が強く,門司から大分にかけての瀬戸内海沿岸と佐賀県東部では男性の恐怖感が強くなる傾向が見出され,地震体験の性差にも地域性の存在することが判明した。 地震の最中「何もしなかった」との回答比率は男性に多く,「意識して身の安全を考えた」のは女性に多い。地震後は男女を問わず「連絡が取れずに困った」者が多いが,男性では「全く問題なかった」者が多く,女性では「寝不足」に陥った者が多かった。これらの詳細について,ポスターで紹介する。

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