日本地理学会発表要旨集
2007年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S601
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転換期を迎える都市圏の動向と都市整備の新展開
シンポジウム趣旨
*藤井 正富田 和暁伊藤 悟
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抄録

1.はじめに
 まず、「転換期を迎える都市圏の動向と都市整備の新展開」と題した本シンポジウムの趣旨と全体構成などについて、ここでは説明したい。このシンポジウムは、平成16~18年度科学研究費補助金・基盤A(課題番号16202022)「社会経済構造の転換と21世紀の都市圏ビジョン― 欧米のコンパクト・シティ政策と日本の都市圏構造 ―」(代表:藤井 正)による研究成果のうち地方都市に関するものに焦点をしぼり、これまでの都市地理学研究をふまえ、都市圏という枠組みから地方都市の課題の明確化とともに今後のあり方を論じようとする企画である。なお、藤井 正、富田和暁、伊藤 悟がオーガナイズを行う。

2.シンポジウムの趣旨と構成
 わが国の人口が減少に転じ郊外の衰退が危惧され、中心市街地の衰退もすすむ一方、人口の都心回帰といわれる現象も見られる。このような社会経済構造の転換をふまえた都市圏の動向とコンパクト・シティなどの都市整備の新展開に関して、学際的な観点も視野に入れつつ都市地理学の立場から、地方都市圏の事例を中心に報告と議論を行いたい。
 まず、人口動向に関して地方都市でも注目される中心市街地へのマンション立地とそこへの転入動向と居住者の生活空間について香川が報告する。そこからは、必ずしもいわゆる都心回帰といった郊外から都心への転入は顕著には認められない。都市内部の移動の多さと都市システム間の移動も含めた移動状況の検証が求められることがわかる。つぎに地方都市中心市街地の空洞化とそれに対する政策などの現状について、高知と九州諸都市の事例を検討する(藤塚報告・山下宗利報告)。また、高知に関して郊外住宅地の抱える課題にも論及したい。
 こうした地方都市の現状や都市構造をふまえた今後の都市整備の展開に関しては、コンパクト・シティの概念を中心に議論を展開したい。わが国でコンパクト・シティ政策を展開している先行例とされる青森市(千葉報告)と富山市の例(松原報告)をとりあげる。また海外で展開されている都市整備に関して、上記のわが国の事例やその問題点と関係の深い事例をイギリスのノッティンガム(根田報告)とカナダのバンクーバーの事例(山下博樹報告)を中心に検討する。コメンテーターには、都市計画分野で早くからコンパクトシティの研究を展開し、オーガナイザーや報告者とも研究分担者として議論を重ねてきた谷口守氏(岡山大学)、ならびに中心商店街再生の研究を展開されてきたが、これまで議論の機会のなかった山川充夫氏(福島大学)にお願いした。そしてこれらの検討・議論をふまえて、都市構造や都市の特性をふまえた今後の整備のあり方に地理学的な視点から迫りたい。

3.報告の構成
<シンポジウム趣旨説明>
 藤井 正「転換期を迎える都市圏の動向と都市整備の新展開 」
<地方都市圏の現状>
 香川貴志「中心市街地立地型の分譲マンション居住者の前住地と通勤事情
     ―札幌市中央区・岡山市・那覇市を事例として―」
 藤塚吉浩「地方都市中心市街地の空洞化とまちづくり
        ―1990年代後半以降の高知市を事例として―」
 山下宗利「個性を活かした中心市街地の活性化策
         ―九州諸都市を事例として―」
<コンパクトシティ政策の展開>
 千葉昭彦 「青森市コンパクトシティ政策の意義と限界」
 松原光也 「ライトレールを先行事業とした富山市の
                  コンパクトシティ政策」
<海外の都市圏の整備事例>
 根田克彦 「イギリスにおけるサスティナブルな小売開発
               ―ノッティンガム市の事例―」
 山下博樹 「バンクーバーにおける都市圏整備政策の
                       成果と課題」
◎ コメンテーター:谷口 守(岡山大)・山川充夫(福島大)

参考文献
 藤井 正(2007)『社会経済構造の転換と21世紀の都市圏ビジョン ― 欧米のコンパクト・シティ政策と日本の都市圏構造 ―』平成16~18年度科学研究費補助金基盤A(課題番号16202022)研究成果報告書,298p.
著者関連情報
© 2007 公益社団法人 日本地理学会
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