抄録
目的と対象地域
わが国では、バブル崩壊に伴う地価下落と連動して1990年代半ばから分譲マンション供給の中心市街地指向が再燃した。この傾向は地方都市圏でも明瞭に確認することが出来る。また、タワー型の分譲マンションも大都市固有のものではない。そこで、本報告では、研究事例が相対的に少ない地方都市圏に焦点を当て、規模や中心性が異なる札幌市中央区、岡山市、那覇市を事例地域として、中心市街地立地型の分譲マンション居住者の前住地と通勤事情を調べ、それを材料として地方都市圏が持つ問題点の洞察を試みる。
結果のあらまし
中心市街地立地型の分譲マンションといえども、市内からの転入が卓越し、巷間で指摘される「人口の都心回帰」は、むしろ「人口の分散抑制」が現実である。通勤では自家用車が多用されており、少子高齢化社会が現実のものとなった環境の下で地方都市圏の持続的発展を図るには、圏的整備としての中心市街地活性化を進めるとともに、線的整備の具体策として公共交通機関の整備が肝要である。