日本地理学会発表要旨集
2007年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S603
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地方都市中心市街地の空洞化とまちづくり
1990年代後半以降の高知市を事例として
*藤塚 吉浩
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抄録

I 研究目的
 1990年代後半以降、地方都市では中心市街地の空洞化に対処するための中心市街地活性化計画が策定されてきた。しかしながら、活性化計画のすべてが効果を発揮したとはいえない。本報告では、1990年代に中心市街地の空洞化が顕著になり、1999年に中心市街地活性化計画が策定された高知市を事例としてとりあげる。
 本発表では、まず、中心市街地の空洞化の状況を明らかにする。次に、中心市街地活性化のために実施された施策と、都市全体としてのまちづくりについて検討する。
II 高知市中心市街地の空洞化
 高知市中心市街地が空洞化してきたのは、次の三つの要因である。第一は、中心市街地の人口の変化である。周辺市街地と県外への人口移動により、人口減少とともに高齢化が進行している。また、周辺部の池地区へ高知女子大学の新キャンパスと高知市立病院や県立中央病院の統合新病院が建設され、中心市街地の昼間人口も大きく減少した。
 第二は、周辺市街地における大規模なショッピングセンター開業の影響である。これは工場跡地に建設されたため、用途地域が工業地域であり、当初映画館の建設は認可されなかった。その後、用途地域が変更され、ショッピングセンター内に複合映画館が開設された。中心市街地には一般映画館が三館あったが、影響は大きく、すべて閉館した。
 第三に、中心商店街への来街者の減少である(図1)。1999年には歩行者通行量の増加したところもあったが、特に帯屋町商店街の通行量の減少が大きい。中心市街地では、全国系列の百貨店とスーパーマーケットが閉店し、地元資本の系列のスーパーマーケットが廃業したことも、来街者減少の要因である。中心市街地からは、食料品を扱う店舗が大きく減少した。中心市街地には高齢者が多く、自家用車を運転できる者は少なく、生鮮食料品の調達が困難になっている者も多い。
III コンパクトなまちづくり
 高知市では、1990年代後半には中心市街地の空洞化が大きな問題となりつつあった。また、1998年9月には集中豪雨災害があり、広域に及ぶ浸水被害が生じた。特に、周辺市街地の農用地が宅地開発されたところでは、雨水道の整備が不十分であり、浸水被害が拡大した。これらから、無秩序な市街地開発を早急に防ぐ必要があり、コンパクトなまちづくりを目標とした都市計画マスタープランが2003年に策定された。
 目標のひとつは、中心市街地の再活性化をはかることである。循環バスの運行や、空き店舗活用によるチャレンジショップの開設などの様々な施策の実施とともに、低・未利用地の再利用促進についても検討されてきた。もうひとつの目標は、市街化区域を拡大しないことである。
 近年、中心市街地への高層共同住宅の建設があり、高知城の眺望確保のための景観問題が起こりつつある。また、早くに開発された周辺市街地の住宅団地では高齢化が進み、生活環境の維持が困難になりつつある。高知市のコンパクトなまちづくりにとって、課題は少なくない。
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© 2007 公益社団法人 日本地理学会
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