日本地理学会発表要旨集
2007年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 302
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ごみ集積所の分布と立地環境
埼玉県熊谷市を事例として
*元木 理寿
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抄録


1.はじめに
 今日、ごみ排出抑制にむけて、早急な解決が求められているが、 家庭ごみという性格上,地域的調査が行われることは少なかった。とりわけ、ごみ集積所の実態把握を行いながら、地域的差異を検討している研究は、小口(1978,1980)をみるに過ぎない。そこで、本研究では埼玉県熊谷市を対象として,ごみ集積所の分布と立地環境に着目し、実態把握をすることを目的とした。

2.熊谷市家庭ごみ集積所の概要
 熊谷市においてごみ集積所の設置は、20世帯以上を基準としているが,その規模や設置範囲、設置場所は各自治会が行っているため地域によってさまざまである。分別方法は細分化され、ごみ収集日も異なるが、ごみ集積所は可燃ごみをはじめとしてほとんどが同じ場所である。また、ごみ集積所には熊谷市が指定する「家庭ごみ集積所」の看板を立てる、またそれを確認できるようにしておくことが義務づけられている。

3.形態別にみるゴミ集積所とその周辺環境
 熊谷市内の全ごみ集積所2,210ヶ所のうち865ヶ所を調査した。さらに、調査した地点のうち781ヶ所についてはそれらの位置を確認できたが、残りの84ヶ所については確認することが出来なかった。 地点ごとにごみ集積所を形態別にみていくと、(1)「ごみ集積所の看板のみ」が確認できるポイント型、(2)入り口が開閉式になっているボックス型、(3)かごの上部からごみを投入する形のハーフボックス型,(4)ネット・カバー(ビニールシート)でごみを覆う型,(5)その他の5つの型に区分することができた。
 これらのタイプからごみ集積所の分布の特徴をみると、(1)型はほぼ市域全域において確認され、(3)・(4)型についても点在していることが確認された。地域的には、JR熊谷駅周辺の中心市街地や国道17号沿いなど交通量の多い道路に面する地域では大部分が(1)型であった。それらの地点では家庭ごみが家の塀や壁、フェンスにもたれるように並べられていた。また、歩道の幅が広い地域では、車道近くの歩道にまとめられていた。近くに電信柱、街灯、標識などがある場合は、それらを囲むようにごみが置かれていた。中心市街地から郊外に移るにつれて(1)型は減少し、(2)・(3)型が増加した。ごみ集積所の周辺が農地である場合はより大型の(2)型が設置されていた。(2)・(3)型の場所においては、ごみ袋等が入りきらず、外にあふれている場合も数多く確認された。また、小河川や農業用水路がある場合、それらの周辺にごみ集積所が設置されているだけでなく、覆蓋されたそれらの上に設置されている事例が確認された。
 一方、郊外では各家庭から離れたところにごみ集積所が位置し、オープンスペース(もしくは共有地)を利用して設置されていた。収集範囲も市街地などに比べて広範囲から家庭ごみを集めることになることから規模の大きな(2)型を設置していると考えられる。また、各家庭から目の届きにくい場所にあることから、集積範囲以外からのごみの持ち込みを容易にできないようにするためや鳥、犬猫などの小動物によってごみ集積所を汚されないようにするためにも管理のしやすい(2)型が設置されると考えられる。

4.まとめ
 ごみ集積所を形態別にみるとごみ集積所の分布には地域的傾向があると考えられる。今後は、家庭ごみ排出量、ごみ収集車の収集範囲などを考慮に入れて、ごみ集積所の立地環境に関する地域的差異について解明していく予定である。

本研究は立正大学ORC「荒川流域における土地被覆変化に伴う水辺環境の変遷および修復に関する研究」および公益信託熊谷環境基金による研究成果の一部である。

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© 2007 公益社団法人 日本地理学会
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